糖尿病の合併症で医療費は一気に跳ね上がる

糖尿病は全身の血管に影響を与えることから“全身病”とも呼ばれます。血管に徐々に影響を与えている段階では他の治療をする必要はなくて、医療費もプラスされることはないのですが、病名がつけられるまで進んでしまうと医療費は一気に跳ね上がります。治療にかかる費用は医薬品の種類などによっても異なるものの、2種類の糖尿病治療薬を使うと月額医療費は2万5000円ほどとなります。自己負担額は1割、2割、3割と状況によって違ってきます。
糖尿病は血管の老化を進めていくことから高齢になるほど血圧が上がりやすくなります。糖尿病と高血圧の治療を一緒に行うことになると医療費は2倍ほどになります。これは薬が増えたので、理解しやすいことです。糖尿病になると細い血管から弱っていくことから、網膜症が起こりやすくなります。網膜変性では医療費は3倍ほどになります。そして、心疾患になると4.7倍にもなるとの報告もあります。糖尿病と神経障害では4.8倍、糖尿病と脳梗塞では4.9倍となっています。
糖尿病の合併症で最も恐れられているのは腎症で、糖尿病が死亡原因となっている人のほとんどは腎障害によるものです。治療薬の段階の医療費は4.8倍とされているものの、これが悪化して人工透析が必要になると20倍以上へと一気に跳ね上がります。人工透析は医療費が大きくかかるだけでなく、週に3回、それも4時間ずつもかかるので、仕事や生活面での負担も大きくなります。
そんなことにならないようにするためには、川上の位置にある糖尿病が悪化しないようにすることです。もっと川上の血糖値が上昇しないようにすることが大切であることはわかりますが、糖尿病と指摘されないと、なかなか生活を見直すところまでいかないものです。それどころか血糖値を測定して糖尿病であることを指摘されても、治療を受けないという人も少なくありません。
糖尿病は、合併症が出なければ糖尿病でなかったのと同じように生活ができる病気とされています。糖尿病と診断されても、医薬品に頼りっきりになるのではなく、食事療法と運動療法をすることが重要になります。食事療法をして血糖値が下がるのが第一で、それだけで充分に下がらなければ運動療法をして、それでも下がらなければ医薬品が使われるのが治療の基本中の基本です。医療費ということでは、自分で行う食事と運動は特別の費用はかからなくても、医療機関で食事療法と運動療法を受けた場合の月額医療費は1万2000円ほどになります。