糖尿病は「しめじ」が出なければ病気ではないのか

ここのところ糖尿病の話ばかりしているので、交流しているテレビのプロデューサーから「糖尿病になったのですか」と連絡が入りました。糖尿病ではなく、糖尿病の研究をしているだけで、健康寿命延伸による地方創生に関わっていると、嫌でも糖尿病患者と家族、糖尿病の治療に関わる専門家との交流が増えていくので、問題点を実感させられる機会が多くなっているだけです。
理事長の父親は42歳の厄年に糖尿病になり、祖父も糖尿病だったことから高校生のときに市の図書館に通って糖尿病の勉強をしたといいます。そのときに、糖尿病は体質的に糖尿病になりやすい人が、食べすぎか運動不足になると発症するもので、体質は遺伝しやすいということも知りました。当時の高校生のレベルではその程度の理解で、当時の図書館には今ほど糖尿病に関する書籍もなかったので、今にしてみると、そこそこの知識しか得ることができなかったということです。
理事長は社会人になってから病院栄養士との付き合いが増え、その栄養士の多くがエネルギーコントロールを中心として扱っていたので、糖尿病の情報が当たり前のように多く飛び込んでくるようになりました。そこで理解したのは、糖尿病は膵臓の機能が低下してインスリンの分泌が低下することから治すことは難しいものの、血糖値が高くなりすぎないように食事、運動を工夫して、血管の老化を防いで合併症にならなければ、糖尿病でなかったのと同じように生涯にわたって生活することができる、ということでした。
糖尿病は合併症が出なければ自覚症状もなくて、合併症も発症しても悪化するまで気づかないことがあり、合併症の恐ろしさを伝えることが重要になっています。それを実現するために今、糖尿病治療の専門家は「しめじ」という言葉を使って指導をしています。テレビ関係者に糖尿病を扱うなら「しめじ」をキーワードにしたらよいと話したときに、キノコのしめじを使ったレシピを送ってきたときにはビックリしました。詳しく説明しなかった当方もよくなかったかとも思うのですが、インターネットで「糖尿病 しめじ」と検索すれば、すぐに三大合併症が出てきます。
三大合併症は神経障害(し)、眼の網膜症(め)、腎症(じ)です。合併症が出たときに、すぐに対処していれば、それ以上は進行させないようにすることはできるものの、対処をしないと次には「えのき」が待っています。悪化した場合の合併症は壊疽(え)、脳梗塞(の)、虚血性心疾患か狭心症(き)です。
「えのき」が出てしまったら命を失いかねないだけに、「しめじ」で止めておくように、というようなことを言う専門家もしますが、患者や家族にしたら「しめじ」でも、とんでもないことです。糖尿病は細くてもろい細小血管が血液中のブドウ糖が濃くなりすぎたために傷んでいく病気で、傷んでしまったら元に戻すことは不可能です。だから治らない病気と言われるのです。血糖値が高い状態にあるということは日々、血管が傷んでいるということなので、そのことを理解して食事と運動で血糖値を安定させなければならないのですが、それができないから合併症で苦しむ人が増える一方となっているのです。