糖尿病は糖質を減らすのが第一か

運動をしたくないから食べる量を減らす、場合によっては一食抜きをするという人がいます。ダイエットの第一は食事を減らすこと、それでダイエットできなければ運動をする、それでもダメならサプリメントを使う……という方法を“ダイエット成功の道”として語っているドクターがいました。なぜ食事を減らすのが一番なのかということについての説明として、「血糖値を上げないのが体脂肪を減らす秘訣」という話をするにいたって、この先生は糖質制限派だということがわかりました。中でも糖質制限は糖尿病の食事療法と主張する人たちの仲間ということもわかりました。
このことについて問い合わせをしてきた編集者に説明したのは、ダイエットと糖尿病を混同していて、ダイエットの手法を糖尿病に使ってはいけない人がいるということです。
「食事療法が第一で、それで効果がなければ運動をプラスして、それでも効果がなければ治療薬」というのは糖尿病治療で言われることです。糖尿病になったら、いきなり薬を使うのではなく、しっかりと食事療法に取り組み、さらに運動療法に取り組み、その二つをやらなければ薬の効果が現れないというのは糖尿病治療の基本です。それには賛成をするのですが、血糖値さえ下がれば治ったものと判断して、他は何を食べてもよいと指導するのは、決してすすめられることではありません。ところが、そんな指導をするドクターは少なくありません。
ブドウ糖が含まれる糖質を食べないようにしたり、極端に減らせば血糖値を上げるブドウ糖が足りなくなるので、血糖値は糖尿病の診断基準以下にすることができます。それで治ったのかというと、細胞がブドウ糖を充分に取り込んでエネルギーを作り出すことが重要であって、細胞が取り込めていないのに血糖値が下がっても、本来の目的は達成されていないので、治ったわけではないのです。あくまでインスリンの分泌量が増えて、そのインスリンによってブドウ糖が細胞に取り込まれてエネルギーを作り出すことが必要なのです。
細胞の取り込む能力が低下しているのに、ブドウ糖の量を減らしたら、さらに細胞はブドウ糖を取り込むことができなくなり、細胞を正常に働かせるためのエネルギーが充分に作られなくなります。糖尿病でない人は一時的にブドウ糖が減ることで、脂肪の合成が減り、蓄積されている脂肪の分解が進んでいきます。これによってダイエットしやすくなることはあります。しかし、ブドウ糖の取り込みが低下している人がやったのでは健康面ということではマイナスにもなります。