糖尿病患者も予備群も1000万人の時代に突入

平成28年国民健康・栄養調査の結果が、平成29年9月21日に発表されました。その前年末には概要が発表されていますが、その間に調査データの詳細が検討されています。その中で注目されて、さまざまなメディアから発表されているのは糖尿病の患者と予備群の数です。
糖尿病患者は、国民健康・栄養調査では「糖尿病が強く疑われる者」となっています。速報で発表したメディアの中には、「糖尿病が疑われる者」と肝心な“強く”を除いて発表していたところもあり、これを見て糖尿病予備群のことだと勘違いした人もいました。実際には糖尿病患者のことです。その糖尿病が強く疑われる者は12.1%で、男女別では男性が16.3%、女性が9.3%となっています。男性のほうが糖尿病患者が圧倒的に多いということです。
糖尿病予備群は「糖尿病の可能性が否定できない者」とされています。糖尿病予備群という言葉を聞くと、普通の印象では少し血糖値が高めの状態の人のことです。ところが、糖尿病患者のことだと思っている人もいます。糖尿病は血液検査をして、血糖値かヘモグロビンA1cが正常値を超えたときに診断されるもので、血液検査をしていない人も含めての推定値となると、“可能性が否定できない者”を糖尿病患者と思う人がいるのは当然のことです。それくらい予備群が、ちょっとしたことで患者になってしまうのが糖尿病の特徴であり、恐ろしさということです。
「糖尿病の可能性が否定できない者」は、「糖尿病が強く疑われる者」とまったく同じ12.1%ですが、男女の割合が違っていて、男性が12.2%、女性が12.1%とほぼ同じになっています。糖尿病は飲食の機会が多く、身体を動かす機会が少ない、そしてストレスがかかり、ストレスに弱い男性のほうが多いのが一般的ですが、予備群だけは男女差がないということになります。その理由については、これから分析して紹介していきます。
国民健康・栄養調査の糖尿病患者と予備群の推移は5年ごとの統計が発表されています。現状の統計では前5回分が掲載されており、平成9年、14年、19年、24年と続き、本来なら29年のデータが30年に発表されるところですが、28年のデータが平成29年に発表されました。これについて問い合わせをしたところ、記念すべきというか驚くべき結果が出たからです。その結果というのは、糖尿病患者と糖尿病予備群がともに1000万人を超えたからです。糖尿病患者は発表のたびに増え続け、糖尿病予備群は19年から減っています。つまり、これまでは予備群のほうが患者よりも多かったのに、糖尿病患者が増えてしまったわけで、これからは糖尿病患者が一気に増えていくことが推定されるわけで、その注意喚起も必要であることから1年前の発表となったということです。
糖尿病は血液検査をすれば、すぐにわかります。しかし、糖尿病患者の推定値と、実際に病院に行って治療を受けている人との数を比べてみると、受診者は76.6%でしかありません。「との結果でした」と書くべきところを、あえて「でしかありません」と書いたのは、もっと受診者が多いとの印象が一般にはあるからです。糖尿病は初期段階では自覚症状がありません。初期段階どころか、合併症が現れるまで何も起こらないという人もいます。それだけに血液検査は、大丈夫だと思っていても受けるべきです。
ちなみに、糖尿病の治療を受けている人の男女比は男性が78.7%、女性が74.1%となっていて、あまり差はみられません。しかし、生活習慣が乱れて血糖値が上昇しやすい40歳代の男性を見てみると、治療を受けているのは51.5%で、受けていないのは残りの48.5%と、ほぼ半々となっているということです。