糖質制限で老化が進む危険性

前回の糖質制限の危険性の話は、文字数不足もあって中途半端に終わってしまったことがあり、すぐにメディア関係者から続きの催促がありました。動物試験による危険性の話を特に知りたがっている方が多く、それについて紹介させてもらいます。試験に使われた動物はマウスで、極端な糖質制限を継続すると30%ほど老化が進み、寿命では20〜25%も短命になっていたという結果です。
何が老化に影響を与えたかということですが、インターロイキン6というレクチンで、免疫細胞のT細胞やB細胞、白血球のマクロファージから産生されるサイトカインの一つです。炎症性サイトカインとも呼ばれていて、免疫を制御する作用が確認されています。レクチンは糖鎖に結合するタンパク質で、インターロイキン6が増えると免疫の低下から病気が増えることが知られています。
長寿研究から、寿命に大きな影響を与えるのは臓器の炎症であることがわかってきていて、その炎症の原因がインターロイキン6で、それを増やすのが長期間の糖質制限だということになると、糖質制限を危険視する人が増えるのも当然との考えです。
これに対して、どれくらい増えているのかという質問がありました。増えているといっても、身体に影響がない程度の増加では、それを評価していいのか迷うところです。特に免疫に関することでは、過去にも免疫を強化する成分が話題になったものの、よく調べて見たら1%も高まっていなかったことから急に話題から消えるということがあったからです。
国内の大学での試験結果では、糖質制限をしたマウスでは通常の食事(エサ)にしたマウスに比べて1.5倍にもなったということです。これは明らかな差で、老化に影響を与えるレベルとなっています。
どうして糖質制限でインターロイキン6が増えるのかということについての詳細の研究はこれからとなるのですが、免疫細胞が正常な働きをしていないことが考えられます。糖質に含まれるブドウ糖は重要なエネルギー源で、すぐにエネルギーとして使われることから全身の細胞はブドウ糖をエネルギー源として最優先させています。最優先といっても、他にエネルギー源となっているのは脂質の脂肪酸、たんぱく質のアミノ酸だけです。
ブドウ糖が充分になり、それが細胞に取り込まれることによって細胞の中で充分なエネルギーが作り出されます。このエネルギーを使って細胞は本来の働きをしています。免疫細胞も細胞と名がついているように、細胞そのものです。免疫細胞もブドウ糖が不足していたら本来の免疫の働きができなくなり、さらに本来なら多くは産生されないはずのインターロイキン6を多く作り出すことになります。こういうことにならないように、免疫細胞もそのほかの全身の細胞も正常に働くように、必要なレベルの糖質は絶対に摂らなければならないことを発言しているのですが、糖質は少ないほうが健康になれると強調している方々の前では、それを正しいことのように伝えているメディアが多い中では、なかなか理解されないことではあります。