糖質制限は長く続けても大丈夫なのか

糖質制限の有効性と限界については、講演でも頻繁に取り上げ、その一部は最新情報の中でも繰り返し語ってきているので、今のまま紹介していてよいのかと考え始めているメディア関係者も増えてきました。このサイトを見ている、私たちに近い方々だけかもしれませんが。糖質制限は血糖値の上昇が抑えられることから膵臓から分泌されるインスリンが減り、インスリンには肝臓での脂肪合成と脂肪細胞への脂肪の蓄積を進める働きがあることから、太りにくいことは当然のことです。摂取したエネルギー量で太る、太らないが決まるのではなく、インスリンの分泌量にかかっていることは随分と知られるようになってきました。
三大エネルギー源のうち、脂質(脂肪)は多く摂取すると健康被害が起こるものの少なすぎても健康被害は起こります。必須脂肪酸という体内では合成できない脂肪酸があり、これだけは食事で摂らないことには健康維持ができないからです。糖質を摂ると体内で脂肪が合成されるといっても、必須脂肪酸が合成されるわけではないのです。
たんぱく質はアミノ酸で合成されています。アミノ酸の中には必須アミノ酸という、これも体内では合成されないために食事で摂らなければならないものがあります。たんぱく質は身体を構成する成分であり、ホルモンや免疫物質などの材料でもあるので、少ないと身体の状態が保たれなくなります。たんぱく質を多く摂りすぎた場合には腎臓に負担をかけることになります。
糖質はどうなのかということですが、必須ブドウ糖という名称はありません。必須も何もブドウ糖が重要なエネルギー源で補わなければならず、脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖だけなので、欠かすことはできません。つまり必須であることから、わざわざ必須ブドウ糖というようなことを言う必要がないわけです。ブドウ糖が含まれる糖質を多く摂りすぎると糖尿病になる危険性は高くても、ブドウ糖が減った場合には特に大きな害は起こらないとの考え方から、糖質制限をすすめる専門家が増えることになりました。
ブドウ糖が大きく不足した場合には、体内に蓄積されているタンパク質からブドウ糖を作り出す糖新生が起こることから生命維持に問題があるほど不足することはないというのも糖質制限をすすめる専門家が口にすることです。
しかし、これまで糖質制限で語られてきた危険性は短期間しか見ていなかったことで、長期間に何が起こるかは触れてこなかったのが事実です。なぜ長期間で調べられていないのかというと、動物試験によって危険性が確かめられていることを人間で試験することができないからです。動物と人間は違うという考えがあるかもしれませんが、危険性があると疑われることを人間で試験をすることは倫理的に許されていません。だから、危険性を示すデータがないわけで、それをもって安全だということはできないのです。