肉を食べるとセロトニンは作られにくくなるのか

脳の認知機能に影響する神経伝達物質のセロトニンは、その前駆体の5‐ヒドロキシトリプトファンが血液脳関門を通過して、脳内でセロトニンとなることを前に伝えました。その材料となるトリプトファンは肉、魚、豆(特に納豆)、チーズ、そば、アーモンドなどに多く含まれているものの、血液脳関門はアミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニンと共通の輸送体によって脳内に取り込まれるので、これらのアミノ酸が多い食事をすると5‐ヒドロキシトリプトファンが通過しにくくなる、ということを紹介したのに合わせるように、雑誌記者から「具体的な食品についての情報を」という問い合わせがありました。
それぞれのアミノ酸が含まれる食品についてはネット検索で簡単にわかることなのに、わざわざ聞いてきたのは、ネットから情報を拾うよりも簡単だからというのもあるのでしょうが、私たちの切り口とコメントが面白いからという反応もあるので、返答をさせてもらいました。
バリンはマグロやカツオ、レバー(豚・牛)、牛肉、チーズ、豆腐に多く含まれています。ロイシンはカツオ、レバー(豚・牛)、鶏むね肉、鶏卵に多く、イソロイシンはマグロ、豚ロース、鶏卵、牛乳に多く含まれています。フェニルアラニンは牛レバー、マグロ、鶏むね肉に多く、メチオニンはマグロ、鶏むね肉、豚ロース、豆乳に多く含まれています。ここまでは体内で合成できないために食品から摂取しなければならない必須アミノ酸です。チロシンは体内で合成される非必須アミノ酸で、マグロ、豚ロース、豆腐に多く含まれています。
一般には肉に多く含まれていると言われ、肉を多く食べていると5‐ヒドロキシトリプトファンが通過しにくくなるとされているわけですが、マグロやカツオにも多く含まれています。これらは青背魚なので血液サラサラ系の脂肪酸のDHAやEPAが多く含まれていて、健康によい食品であるのは間違いないものの、高級魚の青背魚は肉以上に5‐ヒドロキシトリプトファンの血液脳関門の通過に影響を与えるということを紹介させてもらいました。