肉類の脂肪は血液中で固まりやすい

高齢者は肉を食べるように、と言われています。これは肉食によって動物性たんぱく質を多く摂ることにより血管を丈夫にして、健康で長生きとなるための方策です。これもあって、メディアからは肉食のメリットとデメリットについての問い合わせがあります。メリットのほうは高明な医師に聞かれることが多いので、当方にはデメリットの問い合わせが圧倒的に多くなっています。
肉には脂身のように見える脂もありますが、赤身肉の中にも脂肪は含まれています。この見えない脂肪があるために、肉を多く食べると脂肪も多く摂ってしまうことになります。
日本人の血液の温度は37~38℃となっていますが、それに対して羊は約44℃、牛と豚は約40℃、鶏は約42℃の血液の温度となっています。これらの動物に触れてみると体温の高さがわかります。
羊や牛などに含まれる飽和脂肪酸は、その高めの温度の血液の中で溶けているので、それよりも温度が低い人間の血液の中に入ったときには固まりやすくなります。これが肉の“脂”が血液をドロドロにするといわれる理由です。
これらの肉類を多く食べてから数時間経つと固まった脂肪酸が血液の粘度を高くし、血流が流れにくくなります。そのために、血液によって細胞に送られる酸素や栄養素の供給が低下し、細胞から排出される二酸化炭素や老廃物の除去も遅れるようになっていきます。肉の飽和脂肪酸が血管に負担をかけるといっても、動物の場合には特に問題がないわけです。
欧米人は血液の温度が日本人よりも1℃以上も高いので、飽和脂肪酸は血液中では溶けやすくなっています。日本人は飽和脂肪酸が固まりやすいので、『日本人の食事摂取基準』では1日の摂取エネルギー量のうち脂肪は20〜30%の割合で、そのうち飽和脂肪酸は7%以下にすることが示されています。
これを見ると、日本人には、どんな脂肪がよいのかというのがわかります。それは魚類に含まれる不飽和脂肪酸です。獣肉類(牛、豚、鶏など)が恒温動物であるのに対して、魚類は棲息する環境によって体温が変化する変温動物です。魚類は水温に合わせて血液の温度が変化して、温かな海でも冷たい海でも生き延びることができます。環境によって血液の温度に開きはあるものの、水の中に棲んでいるために人間の血液温度よりも低いのは当然です。その低い温度の中で溶けているのが不飽和脂肪酸であるので、それよりも温かな人間の血液の中では、さらに溶けやすくなります。これが魚の“油”が血液をサラサラにするといわれる理由です。