脂肪酸が合成されると中性脂肪になる理由

これまで何度かインスリンの分泌と脂肪酸合成について触れてきましたが、そろそろ質問があるだろうと思っていたタイミングで、「脂肪酸が合成されて、中性脂肪が脂肪細胞に蓄積されるというところがわからない」という説明を求めるメール連絡がありました。脂肪酸というのは脂肪を構成するもので、諸説はあるのですが、炭素数が2〜4個のものは短鎖脂肪酸、5〜12個のものは中鎖脂肪酸、それ以上のものは長鎖脂肪酸と呼ばれています。こんな体内の基本的なことに諸説があるということに驚きを感じる人もいますが、この脂肪酸が3個に、これを結びつけるグリセロールが1個で構成されたものが中性脂肪となります。
脂肪酸は1g当たりのエネルギー量が約9kcalと高く、ブドウ糖は約4kcalなので、ブドウ糖が血液中で多くなったときにはエネルギー効率がよい脂肪酸とするために、肝臓で脂肪酸合成が行われているのです。脂肪酸は細胞の中のミトコンドリアでエネルギー代謝されます。脂肪酸のままだと代謝されやすいので、蓄積するために変化させたのが中性脂肪で、肝臓の中で合成されます。そして、脂肪細胞の中に中性脂肪として蓄えられていきます。血液中の脂肪酸が不足したときには、脂肪細胞の中の中性脂肪が分解されて血液中に脂肪酸が放出されます。
食品に含まれている脂肪のほとんどは中性脂肪です。一般に脂肪というと、中性脂肪を指しています。以前にセミナーで、「アルカリ性脂肪というのはあるのですか」という質問を受けたことがあります。中性脂肪は英語のトリグリセライド(triglycerid)の和訳で、酸性とアルカリ性の中間の中性ではなく、脂肪を構成する成分に対しての中性を示しています。脂肪酸は、酸という文字がついていることからわかるように酸性の性質ですが、中性脂肪では酸性の特徴は現れていません。
こんな質問が出るのは、セミナーに関心を持って参加してもらっているからということで、関心が高い人には、できるだけ理解を深められるように説明させてもらっています。