脈拍が多いと寿命は短くなるのか

NHKの情報番組で、大迫町を取り上げていたので、やっと一般に紹介されるようになったのかという思いで見始めました。大迫というと、その後に半端ないと続くサッカー選手が話題になるところですが、この村は「おおさこ」ではなく「おおはさま」と読みます。今では合併によって岩手県花巻市の一部となっています。しかし、大迫村という名称は医学関係者にはよく知られています。それは日本の血圧の基準は収縮期血圧135mmHg、拡張期血圧85mmHgとされていますが、これは大迫研究という町民1900人が33年間、毎日血圧を測定していて、その結果が基になっています。
この大迫研究では血圧の変化だけでなく、脈拍(1分間の心拍数)も計測されていて、脈拍(心拍数)が少ない人は突然死のリスクが低いことが明らかにされています。
起床後の脈拍が5回増えると突然死のリスクは17%も上昇すると報告されています。61〜64の人を基準の1とすると、65〜69では1.63倍、70〜73では2.54倍、74以上では2.61倍となっています。なぜリスクが高まるのかというと、脈拍が増えるほど血管に負担がかかることとともに、アドレナリンの分泌量が増えるからです。アドレナリンには自律神経の交感神経を刺激して血圧を上昇させる作用があり、アドレナリンが多いほど身体が興奮状態になって、心臓などから炎症物質が放出されます。この炎症物質はがんや感染症を引き起こすことが知られています。
アドレナリンが多く分泌されて、興奮状態になって身体が活動的になることは重要なことですが、身体を休めるべきときにもアドレナリンが多く分泌されると血管の負担は強まるばかりです。若いうちは調整機能が優れているので、交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズにいくのですが、高齢者になると交感神経のほうは必要に応じて高まるのに対して、副交感神経は調整能力が低下して、なかなか興奮状態から抑制状態に切り替えられなくなります。これが年齢を重ねるほど心筋梗塞や脳梗塞が増える原因の一つとなっているのです。