脳に酸素を効果的に送るためのウォーキング

高齢者の健康のための運動というと足腰の健康維持によるロコモティブシンドローム(運動器症候群)対策という印象がありますが、運動の中でも比較的取り組みやすいウォーキングは脳機能の維持と向上のためにすすめられています。厚生労働省による「介護予防マニュアル」でもウォーキングは脳機能のための実施項目となっています。
脳の機能というと一番に気になるのは認知症です。認知症の発症率は65歳以上の高齢者では10人に1人の割合となっています。これは全体の平均であって、年齢層別にみていくと、65〜69歳は1.5%、70〜74歳は3.6%、75〜79歳は7.1%、80〜84歳は14.6%、そして85歳以上では27.3%となっています。この現状が2025年には65歳以上で5人に1人にもなると予測されています。わずか10年ほどで2倍にもなるということです。
高齢者が増えて認知症の患者数が2倍に増えるというなら理解できないことではないのですが、割合となると何か原因があります。その原因として一番にあげられるのは認知症の予備群である軽度認知障害の増加です。生活習慣病の予備群というと糖尿病では血糖値が高めの人ですが、軽度認知障害は認知症の初期段階が始まっています。軽度認知障害の約20%は元の状態に戻ることができるものの、約30%は軽度認知障害のまま過ごし、約50%は5年以内に認知症へと移行しています。この移行の率が高まると認知症患者は増えていきます。
認知症へと進めないためには栄養・運動・休養が重要となります。というのはピンポイントの治療薬が、まだないからです。栄養・運動・休養をいかに実践するか継続するかで進めないだけでなく改善にも取り組まなければならないということです。この中でも運動不足を指摘する声が大きくなっています。中でも歩く機会は減る傾向にあり、以前の1日に1万歩の目標から今では従来よりも1000〜1500歩を増やすことが目標になり、それでも8000歩を目指程度というような状況です。
ウォーキングは有酸素運動の代表です。多くの酸素を吸い込んで歩くことで、筋肉の動きによって筋肉の中を通る太い血管を収縮されて酸素が全身に運ばれます。中でも多くの酸素が運ばれているのは筋肉です。筋肉細胞は酸素を多く取り込んでエネルギー源の糖質(ブドウ糖)と脂質(脂肪酸)をミトコンドリアの中で燃焼させて、エネルギーを作り出しています。
酸素を多く身体の中に取り込むには身体を激しく動かすほどよいと思っている人もいますが、ウォーキングでも運動量が多くなると有酸素領域から無酸素領域になって、無酸素運動と変わらないようにもなります。これでは酸素を効率よく筋肉細胞に届けることができなくなり、エネルギーも効率的に作られなくなります。適度な有酸素運動が続けられる状態を、あまり身体に負担をかけないようにして継続させるために、日本メディカルダイエット支援機構がすすめているのは2本のポールを使って歩くノルディックウォーキングです。それだけを続けるのではなく、歩くスピードを変化させて有酸素運動と無酸素領域の運動を繰り返すことによって、より効果を高めるインターバルウォーキングを提案しています。