脳の健康寿命40 睡眠と認知症の関係

認知症を予防するためには脳を積極的に働かせることが効果的とされていますが、その逆に脳を休ませることも必要となっています。脳を休ませるといっても、目覚めているときには休んでいるようでも脳は動いています。最も休んでいる状態は睡眠中です。
アルツハイマー型認知症と睡眠の関係については、アメリカのワシントン大学の研究成果が有名で、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒などの睡眠が不安定な人は、睡眠が安定している人に比べてアミロイドβの蓄積が5.6倍になっていたと報告されています。アミロイドβは脳内で作られるタンパク質の一種で、健康な人の脳にも存在しています。
健康な人ではアミロイドβは不要なものとして短期間で分解されて排出されていますが、アミロイドβがくっついて異常なアミロイドβができると分解も排出もされなくなり、脳に蓄積されます。そして、神経細胞に付着します。異常なアミロイドβは有害物質を出すことによって神経細胞が傷ついて情報伝達ができなくなります。進行すると神経細胞が死滅して、脳が萎縮していきます。これがアルツハイマー型認知症の始まりです。
睡眠の質がよいとアミロイドβが作られにくくなりますが、継続した睡眠(夜から朝まで)だけでなく、昼寝でも効果があります。ただし、1時間以上の昼寝はアルツハイマー型認知症のリスクが高まるとの報告もあります。
認知症が進み始めた人の場合には、体内時計の調整が乱れやすく、昼夜が逆転したり、日中に眠気が起こる、夜に眠れないということが起こりやすくなります。昼寝が日中の疲労を回復させるだけなら問題はないものの、昼寝のために夜の睡眠に影響が出るようになると、これは見逃すことができなくなります。
短時間の昼寝によって、脳の疲労を回復させることは認知機能を正常に保つためには有効となるので、20〜30分ほどなら安心して昼寝をしてもよいということです。