脳の活性化にはブドウ糖を摂ればよいのか

糖質、脂質、たんぱく質は三大エネルギー源で、エネルギー代謝のときには、それぞれブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸に変化してから使われています。この3種類以外は細胞の中でエネルギーとはならないので、食事で摂る必要があります。全身の60兆個以上の細胞のうち脳細胞だけは特別な存在で、ブドウ糖しかエネルギー源として使うことができません。ブドウ糖が含まれた糖質が不足すると、脳が充分に働くことができなくなります。砂糖が脳を働かせるためによいと言われるのは、ブドウ糖と果糖が1分子ずつ結びついた特にブドウ糖が多い食品だからです。
点滴の成分もブドウ糖です。点滴を使うと元気になるのは、全身の細胞のエネルギー源であり、中でも脳のブドウ糖が不足しているときには優先的に脳に届けられるので、それも大きく影響しています。点滴の応用で開発されたポカリスエットなどの栄養補給飲料は“飲む点滴”と言われるくらいで、たっぷりとブドウ糖が含まれています。
頭を使うとき、脳が使われているとき、脳の機能が低下してきたときにはブドウ糖を補給すればよいという発想になるところですが、ブドウ糖を摂っても、それだけでエネルギーが作り出されるわけではありません。これは脳細胞に限ったことではないのですが、細胞の中にあるエネルギー産生の小器官のミトコンドリアの中にブドウ糖を取り込むためには天然型のα‐リポ酸であるR‐αリポ酸が必要になります。また、R‐αリポ酸はミトコンドリアのエネルギー代謝にも使われます。
脳細胞以外の細胞は、ブドウ糖のほかに脂肪酸もエネルギーとすることができます。脂肪酸をミトコンドリアの中に届けているのはL‐カルニチンです。脳細胞はブドウ糖以外はエネルギー源として使うことができないので、ブドウ糖の摂取とともにR‐αリポ酸の摂取が必要になります。R‐αリポ酸は体内で合成されているものの、20歳をピークに減少し続け、脳の衰えを感じる60歳代以降は大きく減っています。脳機能の改善にはR‐αリポ酸の摂取と言われる理由は、ここにあります。
R‐αリポ酸は胃液で分解されるために、吸収させることができません。吸収させる方法の一つは非天然型のS体のα‐リポ酸(S‐αリポ酸)と組み合わせる方法ですが、それでも分解されにくくなるだけで、少しの量が体内に吸収されても半分(S‐αリポ酸)は使われません。もう一つの方法がγ‐シクロデキストリンによって包接されたR‐αリポ酸を摂る方法で、これなら胃で分解されず、小腸から効果的に吸収されます。具体的にはR‐αリポ酸を包接したγ‐シクロデキストリンが小腸壁に接着して、そのときにはR‐αリポ酸を腸壁から取り入れて、血液中に送り込んでいます。この方法なら胃液で分解されないまま体内に入れられるので、食事の前後でも空腹時でも関係なく摂ることができます。
α‐リポ酸とシクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。