腎臓リハビリにウォーキング

腎臓病を予防するためにウォーキングなどの有酸素運動がすすめられます。しかし、腎臓病になった人には運動は禁止されるという時代が長く続いていました。それが今では、“腎臓リハビリテーション”と呼ばれる腎臓病の人のための運動法があり、日本腎臓リハビリテーション学会によってガイドラインも設けられています。
腎臓病で運動が禁止されるようなことになったのは、腎臓病患者がマラソンをしたところ悪化したという研究発表があり、本来なら「激しい運動は禁止」とされるべきだったのに、運動そのものがいけないとされてしまった経緯があります。
腎臓病は高血圧によって悪化するので、血圧の上昇は避ける必要があります。これも運動がよくないとされる要因の一つとなっていたのですが、運動をすると血管の内皮で一酸化窒素が合成されます。一酸化窒素は窒素と酸素が組み合わさった無機化合物で、血管の中膜に平滑筋の緊張が緩んで血管が拡張します。もちろん、激しい運動では、これを上回る血圧上昇が起こってしまうのですが、ウォーキングのような適度が運動では血管がゆるむほうが優位になります。
腎臓リハビリテーション学会の副理事長は、以前は心臓リハビリテーション学会の理事長であった医学博士が務めています。心臓リハビリテーションは今では心臓病で手術をした人にとっては当然やるべきこととなっていますが、これも以前は運動をするのではなくて絶対安静とされていた時代がありました。しかし、手術後に動けるようになった段階で心臓リハビリテーションの有酸素運動を行うと治りが早く、再発率も少ないことがわかって、退院してからも有酸素運動を続けることが当たり前のように指導されるようになりました。
心臓リハビリテーションも腎臓リハビリテーションも専門家の指導のもとに行わなければならないことですが、会話を続けながら無理なく歩ける適度なウォーキングなら、予防のためにも回復のためにも続けてよいものといえます。