腸の状態の理解のために構造を理解する

小腸は、十二指腸、空腸、回腸から構成され、細く全長が6~7mの管で、栄養素の一部を消化するとともに、90%以上の栄養素を吸収する働きがあります。食塊(食べたもの)が通過する腸管内腔側には輪状ひだがあります。輪状ひだは絨毛の構造になっていて、絨毛の中には血管(動脈、静脈)、リンパ管、神経が走行しています。
食塊と接触する側の絨毛の管腔側の細胞は粘膜上皮細胞といい、ここには細胞膜が細い毛のように伸びた突起の微絨毛があります。こういった構造によって、同じ太さ、長さの管と比較すると、その表面積は輪状ひだで約3倍、絨毛で約30倍、微絨毛で約600倍にもなっています。このように複合的にひだ状になっていることで食塊と接触する面積を広くし、効率的に吸収できる仕組みになっているわけです。
37℃ほどの温度で食品を放置すると腐敗しますが、消化管で腐敗が起こらないのは、胃液はpH(酸度)1~2の強酸性となっているからで、十二指腸はpH5~6の弱酸性となっています。空腸はpH6~7の中性、回腸はpH8のアルカリ性となっています。空腸、回腸に長時間、食塊が存在していると腐敗することになりますが、空腸、回腸で消化、吸収されているため、腐敗は起こらないことになります。
大腸は約1.5mの長さがあり、小腸の2倍ほどの太さ(5~7㎝)があって、盲腸、結腸、直腸に分かれます。結腸は上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。大腸壁は小腸よりも薄く、輪状ひだや繊毛はみられません。
pHと消化・吸収の関係をみると、消化と吸収に関わる酵素は、弱酸性から中性のpHの中で最も働くようになっています。胃液の分泌量が多ければ、腸内のpHは消化・吸収に適した状態となりますが、胃液が少なくなり、pHが低下すると消化・吸収に影響が出るようになるという関係性があります。