腸は第2の脳でもあり肝臓でもある

「第2の◯◯」と呼ばれている器官や臓器は複数ありますが、その中でも腸が最も多く数え上げられています。「胃は消化、腸は吸収」と一般に機能分けして言われていますが、実際には腸の中でも消化は行われています。そこで腸は「第2の胃」とも呼ばれています。
腸の中に棲みついている腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌に大きく分けて考えられています。そのうちの悪玉菌は、腸内で腐敗を進めて有害物質(毒素)を作り出しています。この有害物質が大腸の腸壁から取り込まれると血液中に入り、肝臓に運ばれ、そこで解毒が行われます。腸内環境が整えられて悪玉菌が減ると、有害物質の量が減り、肝臓にかかる負担が弱まっていきます。そのために「第2の肝臓」とも呼ばれます。また、肝臓で処理しきれなかった有害物質があると、これらを濾過する腎臓の負担が高まることから派生して、「第2の腎臓」と呼ばれることもあります。
「第2の脳」とも呼ばれることがあり、これは神経伝達物質のセロトニンが腸内で善玉菌によって作られることが関係しています。セロトニンは脳の神経伝達をスムーズに行うために必要なもので、認知障害の予防・改善にも関わることから注目されているのです。
病原菌や有害物質から身体を守る仕組みの免疫は、若いときには胸腺で免疫細胞が活性化されていますが、加齢によって胸腺の能力が低下すると、免疫の中心は腸に移っていきます。腸壁には全身の免疫細胞に指令を出す腸管免疫と呼ばれる仕組みがあり、そのことから「第2の免疫器官」と呼ばれています。
腸内細菌の善玉菌が増えると腸壁の汚れが減って腸管免疫が働きやすくなり、免疫細胞が増えたのと同じような結果になります。そのことから、腸内細菌は「第2の免疫細胞」と呼ばれています。
大腸では腸内細菌の働きによってビタミンとミネラルの一部も作られています。食事で摂ったビタミンとミネラルは肝臓で活性化されることから、このことによっても「第2の肝臓」と呼ばれています。
このように腸は、いくつもの補助機能があり、複数の機能が絡み合って全身の機能を高めることによって、生活習慣病のほか冷え、花粉症、ダイエット、ストレスなど、さまざまな悩みを解決する基本の臓器となっています。多くの臓器や器官は、自分の努力だけではコントロールできにくいものの、腸管の収縮を高めることと腸内細菌のバランスを整えることによってコントロールできるため、効果的な方法を取り入れることで健康度を高めていくことができるということです。