腸内環境を整えるシンバイオティクスは新登場か

腸の健康を考えるときに、必ずといっていいほど出てくるのが、腸内細菌を腸内に届けることと、腸内細菌のための栄養を与えることの、どちらを優先させたほうがよいかということです。これは健康づくりのプログラムを組み立てているときにも、よく話題にのぼります。腸内細菌の善玉菌と同じものを食品や飲料として食べたり飲んだりするのはプロバイオティクス(probiotics)といいます。善玉菌の代表のビフィズス菌などは腸内では1〜2日しか生きられないので、それを摂っても意味がないという人がいます。だから、腸内の善玉菌の栄養源となるオリゴ糖などを摂るプレバイオティクス(prebiotics)を優先させるべきだと言ったりします。
どちらがよいのかを考えることは腸内細菌を理解するにはよいことではあるものの、私たちは両方に意味があると考えています。ヨーグルトなどでビフィズス菌を摂っても定着しないのだとしても、腸内で生存している間に腸内を酸性化させて、もともと腸内にいた善玉菌が増えやすい環境を作ることができます。プレバイオティクスは腸内にいた善玉菌と食べ物で摂った善玉菌を増やすことができます。
こういった論議がされているときに、メディアに急に取り上げられることが増えたのがシンバイオティクス(synbiotics)です。「新しいカテゴリーの腸内細菌が新発見されたのか」と聞いてきたテレビ局のプロデューサーがいましたが、新発見でも何でもありません。プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒にすることがシンバイオティクスです。どれくらい前の発見なのかというと、プロバイオティクスは1989年にイギリスのフラー博士によって提唱された考えで、腸内細菌の善玉菌と同じ働きをする微生物を摂ることで腸内環境を整えることを指しています。
プレバイオティクスは1995年にイギリスのギブソンによって提唱された考えで、腸内細菌の善玉菌の栄養源を摂ることを指します。プロバイオティクスに対して、前を示すプレ(pre)からプレバイオティクスと名付けられました。そして、シンバイオティクスですが、プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒に摂ることで、一緒にを示すシン(syn)からシンバイオティクスと名付けられたわけです。提唱したのはプレバイオティクスの提唱者のギブソンで、提唱された時期はプレバイオティクスと同じく1995年のことです。あまりメディアに注目されてこなかっただけのことで、「そんなことも知らなかったのか」と言われることが多い“あるあるネタ”の一つとなっています。