血流低下で酸素が不足するとエネルギーが不足する

脳の血流が低下することによって起こる症状や疾患があります。ストレスや寝不足などによって脳血管が萎縮すると血流低下が起こり、正常な血流に戻すために血圧が上昇します。若いときには血管に弾力性があり、新陳代謝が盛んなために、血圧の上昇が血管の老化や動脈硬化にはつながりにくくなっています。ところが、年齢を重ねると自然と動脈硬化が進んでいきます。それよりも老化が進んでいる状態が疾病につながる動脈硬化となります。加齢による動脈硬化に他の要因が重なって疾病につながる動脈硬化が進み、動脈だけでなく末梢の血管にも硬化が起こっているために脳の血流が低下したところに血圧が上昇すると弱くなっている血管が切れたり、血栓が詰まったりしやすくなります。
こういったことから症状がみられた人に対しては血圧を下げる医薬品が使われますが、血流がよくないところに血圧が下がると大事な血液が脳に回りにくくなり、それが脳の機能を低下させるというのが高齢者によくみられることで、これは60歳すぎの人にもみられるようになっています。
週刊誌の記者から、ある有名な作家が高血圧なのに降圧剤(血圧降下剤)を使わなかった理由として「頭が回らなくなるから」と言い、結局は脳梗塞になったとのことのコメントを求められたことがあります。なぜ血圧が低下すると脳の機能が低下するのかという質問がありましたが、血圧が下がって脳の血流が低下すると脳の必要なところに重要なものが届きにくくなります。何が届かなくなるのかというと、ビタミンでもミネラルでもなく酸素です。
このコメントに記者からは、届かなくなるのはブドウ糖ではないかと聞かれました。脳は全体重の2%ほどでしかないのに、全エネルギーの20%ほどを消費する“大飯食らい”の器官です。このために頭を盛んに使う人は多くのエネルギーが必要になり、空腹を感じやすくなります。三大エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)のうち空腹感につながるのは糖質の一つのブドウ糖です。ブドウ糖は燃焼しやすくエネルギーとして使われやすいので、“脳の働きをよくするためにはブドウ糖が多く含まれる砂糖を摂ろう”という業界のキャンペーンがありました。砂糖はブドウ糖と果糖が1対1の割合で構成されています。
脳が使う多くのエネルギーは、脳細胞が作り出しています。血液中のブドウ糖が不足すると大事なエネルギー源が足りなくなるため、肝臓や筋肉に蓄積されているグリコーゲンを分解してブドウ糖を供給する仕組みが備わっています。この不足することがないブドウ糖を用いて脳細胞の中でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出すためには充分な酸素が必要となります。酸素不足では脳を働かせ、全身をコントロールするための脳機能を維持することができないということです。
ということになると、血流低下になると脳を働かせるためのエネルギーが減って、脳をフル回転させて文章を書くことができなくなることから、血圧を高くても降圧剤を使いたがらない人が出てくるのも理解できないわけではありません。しかし、これによって血栓が詰まって脳梗塞になったのでは元も子もない状態になりかねないので、「仕事を減らしても脳血管は守るべき」という当たり前のコメントをしたところです。