西洋医学と東洋医学の未病の認識ギャップ

日本メディカルダイエット支援機構の理事長が、日本未病システム学会の当時の理事長の推薦で会員になったときのこと、たまたま中国のがん治療の取材に上海をはじめとした大学病院などを訪問する機会があり、「未病の研究をする学会にいる」と話しました。その反応は「なんでそんな古いものを日本で研究しているのか」というもので、中国と日本の未病に対するスタンスを垣間見る機会となりました。
日本未病システム学会は健康と病気の間を未病と位置づけて、病気にさせない医療を研究する団体で、東洋医学と西洋医学の専門家が中心となっています。実際には、東洋医学の未病の発想の中で西洋医学によって対処する方法の研究が盛んに行われています。東洋医学では自覚症状があるのに検査で明らかにならないものが未病の範疇です。西洋医学では検査で異常が発見されても自覚症状がないものが未病の範疇です。
中国の医療は西洋医学が基本ですが、発想が東洋医学で、西洋医学の薬を東洋医学の証に当てはめて、体質と状態によって西洋医学の薬を使い分けています。漢方も同時に使われることはあり、ただ効き目が強い薬ならよいという発想はしていません。その人の体質と現状に最も合った薬がよい薬であって、治療によって状態が変化してきたら、それに合わせて最もよい薬に変えていきます。どんなに優れた薬でも、その人に合わなければ“クスリ”ではなくリスクにもなりかねません。
生活習慣病の糖尿病も高血圧症も脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)も、診断基準を超えていても初期段階では特に何も自覚症状はなく、未病の診断そのものです。それでも明らかではないものの体調不良は感じているはずで、その段階で検査をして初期段階を察知して、すぐに対応すれば病気に進まないようにすることは可能で、未病から元の健康状態にすることも可能です。
そのときには弱めの治療薬で済みます。症状が悪化して、自覚症状が現れてから、それを改善するために強い薬を使うとなると自分の体質に合ったものでないと副作用などのリスクも覚悟しなければならなくなります。日本の医療の現状が、体質を考えたものにはなっていないのだとすると、まさに未病の段階で察知するための検査は重要になります。
しかし、検査で血糖値が高いことを指摘されても、半分以下しか受診をしていないという現状を考えると、糖尿病、高血圧症、脂質異常症が進んで本格的な病気になってしまったら、死に向かって一直線で、医療費もかかる一方という事実も同時に伝えなければならないことがよくわかると思います。