認知機能の健康は先回りをして対処する

未病の師匠である都島基夫先生は、病気にならないように先回りして対処する未病医療に取り組むきっかけは、慶應義塾大学病院で循環器の患者を診はじめたときに、救急医療で虚しさを感じたことだと話しています。救急医療の発展は目覚ましく、医療が進めば進むほど命を失わずに済む人は増えていきましたが、その一方で完全に治ることがなく、障害を一生涯抱えて暮らすことを余儀なくされる人を増やす結果になるという現実があります。
以前であったら治療が及ばずに亡くなっていたかもしれない人の生命が救われるのはよい結果であったとしても、治療後に寝たきりになる、寝たきりではないものの退院後に家から出られない、自由な生活を送ることができないというのでは、不幸な長生きを強いることにもなりかねません。
救急車で搬送されて来る患者、それも慶應義塾大学病院に搬送されて来る患者となると相当に重い状態であって、医師としての限界を感じるであろうことも当然に想像がつくところです。
もちろん救急医療も、その後の治療も重要であるのは間違いがないことですが、それと同時に救急状態にならないようにすること、もしも救急搬送されるような立場になったとしても自力で回復できるような状態であってほしいとは医師も家族も感じることです。
病気になると、医療の介入なしには悪化する一方という状況にもなるわけですが、検査数値に異常が見られた段階でなら、医薬品が使えるレベルであれば初期段階の軽いものを使って、医薬品がいらない状態に戻すことも可能です。医薬品が使えるレベルまで達していない人の場合にはサプリメントを用いて改善を目指すということも当然のように考えられます。
サプリメントは薬ではないので、食品と同じように自由に使ってもよいと考えられることもありますが、特定保健用食品や機能性表示食品が登場した今の時代には医薬品と同様のメカニズムで作用するものもあり、使い方が正しければ、医薬品を使わなければならない状態に進むことがないようにすることができます。
どうしても医薬品を使わなければ対処できない状態では、医薬品が第一義になるのは仕方がないことですが、その前の軽い医薬品でも対応できる段階では医薬品だけでなく、運動習慣や食事習慣の改善によっても対応できます。その指導もできるのは未病医療のドクターの腕の見せどころであり、幅広い知識を得て対応するために、付き合う範囲を広げることも未病医療を完成させるためには必要との考えです。
この未病段階での対応は、身体の病気だけでなく、認知機能の病気の予防にもつながります。認知症の原因はアルツハイマー病が一番多いものの、脳血管の疾患がなかったら発病しなかった人が数多くいます。アルツハイマー病のほうは防ぎようながいとしても、脳血管の健康は食事と運動で保つことができるので、認知機能の未病は循環器医療の専門家の得意分野と言えます。今、都島先生は認知症専門病院の理事長として活躍されています。