認知症のリスクを高める肥満は歩いて改善

メディカルダイエットの研究している関係もあって、肥満と認知症の関係性についての質問をされることがあります。この研究成果が初めて公開されたのは2014年のことで、北米神経科学学会の研究成果でした。この研究は60歳代を対象にして8年間にわたって実施されたもので、肥満体型の被験者は脳の認知機能に関わる海馬が1年で2%近くも収縮していることが明らかにされています。標準体型の人では約1%の収縮であることから、2倍にもリスクが高まっていることになります。
これとは別の研究成果ですが、肥満度を示すBMI(体格指数)が25.5以上の肥満体型の人は、適正値である20.5〜22.9の人に比べて、認知症の発症リスクが2.44倍にも高まることが判明しています。これは国立台湾大学の調査なので、アメリカ人を対象とした調査とは異なるところがあるものの、人種が異なっていても同様の結果となっていることがわかります。
肥満体型で認知機能が低下するメカニズムについては、いまだに解明されていないのですが、脂肪細胞から分泌される免疫系化学物質が、脳の記憶に関係する海馬の中で細胞死を促進すると同時に、新たな細胞の増殖が抑制されることが考えられています。
こういった研究成果を受けて、日本国内でも研究は進められています。日本老年医学会の「高齢者肥満症診療ガイドライン」2018年版には、認知症、運動機能(ADL)低下などの観点から新たにクリニカルクエスチョンが設定され、システマティックレビューによって新しい観点が加えられています。ガイドラインの肥満症の影響では、肥満と認知症リスク、運動機能の低下、心血管疾患などとの関係が記されています。高齢期の認知症のリスクについて、「中年期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクであるので注意(推奨グレードA)」「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べてよりADL低下・転倒・骨折、死亡をきたしやすいので注意する必要がある(推奨グレードA)」などと注意を促しています。
高齢者の認知症のリスクは、その前の年代である中年期の肥満が影響しているということで、認知症予防のためのウォーキングは体脂肪の減少を目指したものにするべきだということとなります。