認知症予防には睡眠時間を長くすればよいのか

高齢者になると、睡眠が浅くなって早朝に目覚めることがあるので睡眠時間が短くなると思われている反面、昼寝や居眠りが多くなって睡眠時間が長くなるとも思われています。実際のところはどうなのかというと、国民健康・栄養調査によると平均的な1日に6〜7時間の睡眠時間の人は60歳以上では少なくなって、その代わりに7〜8時間、8〜9時間の人が増えていきます。その傾向は男性のほうが高くなっています。
寝ている間は身体を動かさないので生活習慣病のリスクは高まるものの、脳の負担は減るので、認知機能にはプラスになるという考えがある一方で、起きているときに脳が使われているので、かえって認知機能にはマイナスになるという考えもあります。睡眠時間が短くなると脳細胞のアミロイドβが増えるとの報告があります。アミロイドβはアルツハイマー型認知症の原因と考えられていて、このことから睡眠時間が長いと認知症になりにくい、と説明されることが多くなっています。
しかし、この結果は睡眠時間が短くなると認知症のリスクが高くなるということで、睡眠時間が長くなることによって、本当に認知症リスクが低くなるのかが証明されたわけではありません。これについて高齢者を対象にした久山町研究の解析を九州大学が行い、睡眠時間が5〜7時間未満のグループと比較して、BMI(体格指数)、高血圧、糖尿病、飲酒習慣、喫煙習慣などを考慮してリスクを算出したところ、5時間未満のグループの認知症リスクは2.64倍、あらゆる原因による死亡リスクは2.29倍となっていました。睡眠時間が10時間以上のグループの認知症リスクは2.23倍で、死亡リスクは1.67倍となっていました。
このことから言えるのは、睡眠時間が長くなるほど認知機能が高まるということでも低下が抑えられるということではなく、長すぎる睡眠は認知症になりやすいだけでなく、死亡リスクも高まるということです。