超高齢社会の認知対策のポイント

健康づくりというと、足腰や内臓などの身体的な状態だけでなく、脳機能の健康も重要な関心事となっています。調査結果(2012年統計)によると、認知症患者は462万人、認知症の予備群である軽度認知障害患者は400万人と推定されていて、合計862万人は65歳以上の4人に1人の割合となっています。このまま進めば2025年には認知症患者は700万人、軽度認知障害患者は600万人を超えると推定されています。そんなにも先の話ではないのです。
医療機関において軽度認知障害と診断されたときに的確な治療薬が処方されて、改善できるのならよいのですが、軽度認知障害には適切な治療薬はありません。血圧が高い人には降圧薬、血糖値が高い人には抗血糖薬を使って、間接的に進行を抑えようとする方法取られるだけです。認知症の医薬品も、認知症を改善するものではなくて、現状を維持するか重症化を数年遅らせるだけなので、軽度認知障害の治療薬は期待できるものではないのです。
治療薬がないなら何を指導されるのかというと、認知症のリスクを高める生活習慣病の予防・改善のための治療などに加えて、食事の改善、適度な運動、休養が指導されるだけです。そんな当たり前のことを実践するだけでも、30%ほどは軽度認知障害からの改善がみられています。いかに生活習慣の改善が大事かということで、正しい生活習慣(バランスの取れた栄養、適度な運動、充分な休養)を心がけていれば軽度認知障害も防げるということを示しています。
改善しないものの現状の軽度認知障害のままで認知症まで進まないで過ごせるなら、これはこれで幸せなことかもしれませんが、それは軽度認知障害と診断された人の約20%です。問題は、それ以外の人で、軽度認知障害の人は1年間で10〜15%が認知症になり、5年間で約50%が認知症に進行しているという実態があります。
この実態を考えると、「加齢に伴う身体的機能の変化の出現が5〜10歳は若返っている」という理由をあげて、75歳以上を高齢者とするという日本老年学会と日本老年医学会の提言は、認知機能については当てはまらないのではないかと思えてしまいます。
介護を受けなければならない要介護者となったとしても、介護をする人に全面的に頼るのではなく、自分でできることは自分でやって、介護スタッフの負担を減らすようになりたいと多くの人が考えているはずです。家族が介護をする環境なら、それはなおさら強く感じることです。そのためには部分的に機能が低下していたとしても、全身として見たときには“健康な要介護者”でありたいと考えるのは当然のことであり、そうなるためにも健康維持に有用なウォーキングなどの活動に取り組むようにしてもらいたいものです。