足と脚の認識ギャップ

姿勢や歩行について書くときに、“足”という字と“脚”という字を使い分けています。ともに「あし」と読むのですが、意味合いが違っているので使い分けているつもりでも、ときどき混ざってしまうことがあります。ずっと足で書いてきたのに、途中で一つだけ脚が出てくると、その違いを説明しないといけなくなり、文字数に制限があるときには説明を省こうとして、わざと足と書くこともあります。しかし、説明している内容が異なっているときには、完全に使い分けるようにしています。
足と脚は、どこが違うのかというと、足は踝(くるぶし)から下の地面について身体を支える部分を指しています。これに対して脚は股関節から下を指しています。足を前に出して歩く、というような表現をしたときに、実際に動かすのは脚であっても、前に出て地面に触れるのが足裏であるときには足でも構わないと感じて使っています。ところが、下半身の筋肉を使って歩くということを表現するときには足では伝わりにくくて、脚でないと勘違いされることもあります。
脚は股関節から下ではあっても、脚を全体的に使って、歩幅を広げて歩くということになると、意識して使うのは腹筋の中でも下腹の部分の筋肉です。勢いよく歩くことや姿勢をよくして歩くことを指導するときに「腰を使って歩く」「腰から歩く」という表現が使われることがあります。腰を使って、というのは腰を前に進めるようにして歩くという意味で使われることが多いのですが、歩幅を広げて歩くことを伝えるときには、骨盤を動かすことが指導されます。
骨盤が左右に揺れて、前後に動かない状態で歩くと、しゃなりしゃなりとした歩き方というか、能の動きのようになって、すり足の感覚に近くなります。これに対して、骨盤を動かすと骨盤の片側が前に出た分だけ、その先の脚も前に出るようになって、これが歩幅を広げる結果となります。
よく下半身には全身の筋肉の70%ほどがついているので、歩くだけでも筋肉が鍛えられるというようなことが言われます。この場合の下半身の筋肉というのは骨盤の位置からということで、一般にはヘソから下の筋肉を指しています。ヘソから下の筋肉を意識して、ヘソが前に引っ張られる感覚で歩くということを講習などで伝えさせてもらっています。