軽い運動は激しい運動の2倍の時間でよいのか

地方紙の記者から「軽い運動の効果は激しい運動の何倍の時間をすればよいのですか」という質問を受けました。軽い運動というのを歩く程度とすると、運動強度を示すメッツ(METs)では3メッツです。メッツは何もしない状態(安静時)の強度を1メッツとして、それの何倍にあたる強度なのかを示したものです。激しい運動を走ることだとすると9メッツになり、これから考えると軽い運動は激しい運動の3倍の時間やればよい、ということになります。
メッツが登場したのは2006年の健康づくりのための運動指針で、使い古されたデータという感じがするので、最新データ(2018年9月)を紹介しました。これはWHO(世界保健機関)が168か国の約190万人の成人(18歳以上)を対象にした調査の結果で、28%(男性23%、女性32%)、人口では14億人が運動不足によって心臓疾患、がん、糖尿病、認知症などになるリスクが高いというものです。日本では36%(男性34%、女性37%)となっています。
運動不足を解消するためにWHOでは1週間で150分以上の軽い運動(ウォーキング、軽いサイクリング)、もしくは75分以上の激しい運動(ランニング、エアロビクス)を推奨しています。これに従うなら、軽い運動は激しい運動の2倍の時間やればよい、ということになります。
運動不足が死亡リスクを高めるというデータは、やや古いのですが、2007年に厚生労働省が死因に影響するものの死亡率を示しています。1位は喫煙、2位は高血圧で、運動不足は3位となっています。これに次いで高血糖、食塩摂取、飲酒となっていて、健康維持のために改善しなければならないことのうち、運動をすることが大事だということを示しています。もちろん、運動をすれば他のことは気を使わなくてよいということではなくて、死亡率1位の喫煙は、すぐにでもやめたほうがよいのは言うまでもありません。
重要なデータということで、新たなデータが発表されるのを待ちつつ、古いデータを使っているということを話しました。