軽度発達障害とは何だろうか

発達障害の話をするときに、軽度発達障害という言葉に遭遇することがあります。認知症の予備群は軽度認知障害と呼ばれていて、これと同じように発達障害の予備群と勘違いされることもあるのですが、軽度発達障害は今でいう発達障害の範疇にあるもので、現在は原則として使われない用語となっています。
発達障害は知能や障害には関係なく、自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、学習障害に当てはまる状態がみられたときに判断されます。発達障害児のうち知能指数がIQ70未満の場合を以前は発達障害と呼んで、それ以外のIQ70以上の場合は軽度発達障害と呼んでいました。
今でも発達障害を受け入れる施設では、軽度発達障害と発達障害を分けているところがあります。また、IQの問題ではなくて、心身の障害がある子どもで発達障害もある場合は、これは発達障害の範疇ではなく障害児として扱っているところもあります。
軽度発達障害という言葉が使われると、まるで障害が軽度であるという誤解を招くことになります。そこで“軽度の”発達障害という言葉を使って、区別するようにしている人もいるのですが、発達障害は知能指数の問題ではありません。脳の発達の特性からコミュニケーション能力などが通常とは異なり、本人としては非常に困っている状態にあります。知能指数だけで区別ができるようなものではないのです。
そこで2007年に文部科学省は発達障害者支援法に定義に基づいて「発達障害」を用語として表記することとして、「軽度発達障害」は意味する範囲が必ずしも明確ではないことを理由として、原則として使用しないこととの通達をしています。
ただし、学術的な研究において、必要に応じて根拠を示して使用することや、説明するために列記して使うことは妨げられるものではないとされているので、まだまだ一般には混同されて、勘違いされる状態は続いているということです。