運動をしないと筋肉量が減る一方のメカニズム

身体についている脂肪の割合は体脂肪率であることが有名になり、体脂肪計に乗るだけで測定して表示されます。男性の体脂肪率は20%以下なら、女性は30%以下なら正常ということも知られていますが、筋肉の割合のほうはあまり認識されていません。旧型の体脂肪計では体脂肪率くらいしかわからないのですが、進化系の体組成計では筋肉の割合も表示されます。表示されているのに関心が低いために、体脂肪率は覚えていても筋肉率は知らない、覚えていないという人が多いのです。体脂肪が増えると病気のリスクが高まるので関心が高くても、筋肉の割合が減ったからといって、すぐに病気に結びつくわけではないので、どうしても関心の高まりに欠けるということです。
平均値でいうと男性の場合は20歳代がピークで35%ほど、女性の場合は28%ほどとなっています。年々減り続けて、これが60歳代になると男性が30%、女性が23%ほどにも下がります。筋肉量が減ることによって筋力低下や身体機能低下を起こすサルコペニアのリスクが急激に高まる筋肉率は男性が27.3%、女性が22.0%とされているので、60歳代で運動不足の人は、かなりリスクが高まることになります。
筋肉量が減るというと、まるで筋肉そのものが減っていくような印象が抱かれがちですが、筋繊維(筋肉細胞)の数は生まれたときから変わっていません。1本ずつの筋繊維が運動による刺激を受けることによって太くなると筋肉量が増えて、刺激が少なくて細くなると筋肉量が減るということです。ということは、筋肉量は年齢を重ねてからでも、しっかりと運動を続けていれば増やせるわけです。とはいっても、運動をした割には高齢者の筋肉量の増え方は多くはありません。というのは、筋繊維は刺激を受けると傷ついて、これを修復するために筋繊維の周りにサテライト(衛星)細胞が集まり、これがタンパク質を多く取り込んで、筋肉を太くしていきます。
そのサテライト細胞が働くためには成長ホルモンに似たインスリン様成長因子(IGF-1)が必要です。これは肝臓から分泌されていますが、筋肉運動をすると筋肉からも分泌されます。その分泌量が年齢を重ねると減少していくので、運動の割に筋肉が増えないということになるのです。では、高齢者はどうすればよいのかということですが、一つは筋肉を効果的に刺激する運動をすることで、高齢者対象の筋肉運動が相当します。もう一つは細胞の活動を促進させるヒトケミカルを補充することです。ヒトケミカルはα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10のことで、詳しくは、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。