適度な有酸素運動で血管を若返らせよう

血圧の上がりすぎを抑えることは血管の老化を抑えて、動脈硬化を予防することに役立ちます。血管の老化を防げば、それで心臓や脳の疾患を予防できるのかというと、血栓という難敵がいます。動脈硬化を防いだとしても、細小血管に血栓が詰まってしまうと、その先に血液が送られなくなり、酸素不足となって脳細胞が死んでしまうことになります。これが脳梗塞の始まりです。脳梗塞は血栓が詰まって血流が止まった状態が24時間以上続いたもので、それ以下の場合は一過性脳虚血発作と診断されます。
動脈硬化を予防して、しかも血栓が詰まらないように、その先の血栓ができないようにするのが心臓と脳を守るためには有効なわけですが、そのためには血液サラサラの成分が含まれたものを食べることでは充分ではありません。最も役立つのは有酸素運動で、私たちはウォーキングを、それも早歩きでのウォーキングをすすめています。
なぜ歩くことがよいのかということですが、動脈硬化は血管の内側の内皮細胞の機能が低下することで起こります。内皮細胞からは血管拡張物質のNO(一酸化窒素)が作られ、これが血液中に放出されると血管の平滑筋が緩んで血管が広がり、血圧も低下します。NOの放出量は血流に影響を受けていて、運動不足で血流が低下すると放出量が減り、血流が速くなると放出量が増えます。高血圧の原因は塩分の摂りすぎや肥満、ストレスなど、いろいろなことがあげられていますが、最大の原因は運動不足だとも言われているのです。
血流を速くするというと、走ったり、激しい運動をすることを考えがちですが、血管に負荷がかかりすぎる運動は、動脈硬化を進めかねません。NOを多く放出させるのは少し汗ばむ程度の中強度の運動で、有酸素運動の速歩き、軽いジョギングなどのほうが効果は高くなっています。継続時間も重要で、20分以上の有酸素運動によって血液中のNOが増えることが確認されています。ウォーキングの場合には、10〜15分ほどではブドウ糖の燃焼量が多く、それを過ぎると脂肪酸の燃焼が進むので、初めのうちは血糖値を下げ、後半は中性脂肪が減って、内臓脂肪の減少にも役立つことになります。