酢飯で夏バテ解消ができるのか

地方のテレビ番組を見る機会があり、夏バテ解消の料理の成分としてビタミンB₁とクエン酸を取り上げ、それが含まれる食品を紹介していました。
ビタミンB₁は納豆、枝豆、豚肉、オクラなどを紹介していたのは特に問題はなかったのですが、クエン酸は酢に含まれているので、ご飯を炊くときに酢を少し加えるといいという紹介をしていました。酢飯なら、もっとよいという話もしていましたが、これには引っかかりを感じました。というのは、クエン酸は酢なら黒酢に多く含まれていて、他の食品では柑橘類が代表的なものです。一般の酢に多く含まれているのは酢酸です。
クエン酸が夏バテに効くというのは、細胞のミトコンドリアの中にあるTCA回路(サイクル)を活性化させる働きがクエン酸にあるからです。TCA回路はブドウ糖や脂肪酸をエネルギーとするために働いている器官で、クエン酸から他の酸に変化していき、一周するとエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生します。スタート地点のクエン酸が多くあると代謝が盛んになるので、エネルギーが多く発生して元気が出て、疲労回復にもつながるということです。
テレビ番組では、このメカニズムの説明がないまま、クエン酸があれば疲労回復になると短絡的な説明をしていました。メカニズムは違っていたとしても、クエン酸が多く含まれているのが黒酢であることを紹介してくれていれば、ここで取り上げることもないのですが、米酢も同じ酢だからクエン酸が多く含まれている、疲労回復効果があるというのは見逃すわけにはいきません。
酢飯に黒酢を使う例はないわけではないので、クエン酸は含まれているものの、クエン酸が多くはない酢を使った酢飯で疲労回復というのは難しいかと思います。
ビタミンB₁とクエン酸については、このサイトの「サプリメント事典」を、TCA回路、ブドウ糖、アデノシン三リン酸については「健康用語事典」を参照してください。