酸素が不足するとエネルギー産生が低下する

細胞のミトコンドリアの中にあるTCA回路の中では、ブドウ糖と脂肪酸をエネルギー源にして、エネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作り出されています。このATPがリン酸を一つ離してADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生しています。このエネルギーを用いて、それぞれの細胞が働いています。これは細胞の中で作り出されたエネルギーが、その細胞の中だけでしか使われないことを示しています。他の細胞で作り出されたエネルギーが電気のように伝わって、他の細胞で使われることはないからです。
こんなことを書いたのは、テレビのディレクターとの打ち合わせのときに、「脳を働かせるためのエネルギーは脳の中で作るしかないのか」と聞かれたからで、脳を正常に働かせるためには脳細胞にエネルギー源のブドウ糖を多く送り込むことが第一に必要になります。全身の細胞は基本的に三大エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を使うことができるのですが、脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源とすることができません。“ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源”と言われるのは、こういった理由からです。
脳細胞の中でブドウ糖をエネルギーとするためには、まずはミトコンドリアに通過させるブドウ糖を増やすことで、その通過のために使われるのはα‐リポ酸です。α‐リポ酸の中でも天然型のR‐αリポ酸だけが体内で働くことができます。通過したあとにもR‐αリポ酸がTCA回路の回転のために働くのですが、TCA回路は酸素を用いてエネルギーを作り出すシステムです。このシステムを効率よく働かせるためには充分な酸素を吸い込んで身体を働かせることが必要です。今回の話でいうと充分すぎるだけの酸素を吸い込んで脳細胞を働かせる、ということになります。
ディレクターが質問をしてきた背景には、日本メディカルダイエット支援機構の理事長の体調があります。理事長は心臓の弁の閉まりがよくないために、本来なら心臓から勢いよく出て行くはずの血液の一部が逆流して、勢いが足りなくなっています。弁の異常でもなく、弁の老化でもなくて、弁と拍動をコントロールする電気信号の流れの一部が正常でないために弁の閉じが遅れることが影響しています。原因に不安はなくても、起こっているのは病気と同じことで、末梢血管の血液の流れが低下しています。脳血管は末梢中の末梢で、脳細胞の隅々まで血液が行き届いていないために酸素不足になっています。
酸素は不足すれば、脳細胞で作り出されるエネルギーが少なくなり、脳機能が低下して集中力や理解力、判断力などが低下して、「まだまだ若いのに高齢者みたいな反応」と仲間から揶揄されるような状態になっています。脳機能を正常に近づけるためには三大ヒトケミカルのα‐リポ酸(R‐αリポ酸)も重要になるのは当然ですが、酸素が充分でなければエネルギー産生も低下するということで、末梢血管の酸素量を増やす有酸素運動について実践研究を進めているところです。
α‐リポ酸については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。