酸素を多く吸えばやせるわけではない

有酸素運動は体内に酸素を多く取り込むことが大切であり、そのために速歩と普通歩行を交互に繰り返すインターバルウォーキングを紹介しています。そんな面倒なことをしなくても、「携帯型の酸素吸入器を使って酸素を口から入れてやればいいのでは」と考える人は多くて、インターバルウォーキングの説明をすると、よく質問されることです。ジョギングをして息苦しくなったときに、圧縮酸素を吸い込むことはありますが、それは一時的に不足した酸素を入れているだけで、その多くは肺まで届かずに口と鼻から抜けています。体内に酸素を取り込むためには、肺に酸素を送り込み、肺の中で赤血球のヘモグロビンに酸素が結びついて、血液中を運ばれ、全身の細胞に届けられます。
ヘモグロビンは酸素を結合して、血管の端で酸素を離し、代わりに二酸化炭素を結合して肺まで戻ってきて、ここで二酸化炭素と酸素の交換をしています。ヘモグロビンはブドウ糖が結びついて糖化すると酸素を結びつけても離せなくなります。ヘモグロビン本来の働きをしなくなるわけですが、ヘモグロビンとブドウ糖が結びつくとヘモグロビンA1cとなります。正常な状態ではヘモグロビンA1cは6%以下となっています。全体のヘモグロビンのうち6%までがヘモグロビンA1cになっていても健康面では影響はないということを示しています。
6%を越えると糖尿病の疑いがある人、つまり糖尿病予備群となり、6.5%を越えると糖尿病と診断されます。正常値は4.3〜5.8%とされます。高い人では10%を越えることもあります。それでも全体(100%)に比べると、わずかな違いのように思われるかもしれませんが、全身に送り届けられる酸素が減ると、さまざまな変化が起こってきます。その初めの出来事は、有酸素運動をしても、なかなかやせない、つまり酸素が不足するために脂肪酸の代謝が低下して、頑張って運動をした割にはダイエットができないということになります。
ダイエットのためには、脂肪にだけ注目するのではなく、血糖値の変化にも気づかって、酸素を充分に運べるようにしておくことが大切です。酸素が不足して太りやすくなっているときには、脳に届けられる酸素量も減っています。ということは、血糖値が上昇して酸素不足になると、脳の代謝が低下して、これが認知機能を低下させる一因になっているのではないかと考えているところです。