靴底の片側だけが減る理由

歩くということは、右と左の足を交互に前に出すのが基本になります。左右の足の運びが同じであれば、足にかかる負荷は左右ともに同じになって、靴の磨り減りも同じになるはずです。しかし、長らく歩いた人の靴の底を見ると、左右ともに同じように減っているというのは、ほとんど見ることができません。歩いている本人は、左右ともに同じように足を出して歩いているつもりでも、実際には異なっているということがあるからです。
左右の腕の振りが同じなら、普通なら左右の足の出方も同じになります。しかし、歩き方は腕の振り、骨盤の角度、左右の足の筋肉量や強度によって違いが出てきます。歩行するときには、かかとから着地して、足裏の側面と地面に着地させて、指まで体重を移動させて前進していきます。これが左右ともに同じように動くということは難しくて、左右の足の運びを観察していると、左右で歩幅が違ったり、踏み出しが違ったりして、左右が違う動きになっていることもあります。
こういったことが起こっているかどうかは、普段の歩き方をチェックしても、なかなかわからないことです。しかし、普段の歩き方を記録している靴の裏側の磨り減り方を見ると、左右の足の運びが同じなのか、それとも違っているのかを確認することができます。
本人は正しく歩いていると申告していたのですが、靴底をチェックすると片側ばかりが減っている人がいて、なぜだろうと日常生活を確認させてもらったところ、ペットの犬を連れて散歩していて、それをウォーキングとしていると話していた人がいました。ペットをつなぐリードを持ちながら歩いていると、元気のよい犬だと引っ張られる形になって、リードを持っている側が前に出て、斜めになって歩くことになります。犬に元気がなくて飼い主が引っ張る形になっても、やはり斜めになって歩くことになります。
犬の散歩よりも、自分だけを歩くウォーキングのほうの時間が長ければ、そんなこともなくなるのでしょうが、「犬の散歩=ウォーキング」と考えている人は少なくなくて、靴底の減り方だけでなくて、まっすぐに歩いていないことで足腰の負担を強くしている人も少なくないのです。