食事指導の改善のアピールは何だったのか

冬季オリンピックに参加して、金メダルが期待されている選手を取り上げたテレビ番組があり、たまたまメディア関係者と会食しながら見ていたこともあり、その後を追いかけていました。普通なら、その後の成果を紹介する番組があってもよいはずです。なにしろ、その番組は食品メーカーがスポンサーとなっているものではないのですが、その食品メーカーが協力していることで強化施設の運営も食事サポートも成功させているということが伝わっているので、この手の研究者でなくても“その後”は気になって仕方がないはずです。
それなのに番組がなく、企画しているという話も伝わってきていないので、その選手を追いかけている放送局の担当ディレクターに接触をしました。そして、面談してインタビューをしてきました。具体的なことは最後まで話してはくれなかったのですが、テレビ番組の内容とは違う食事の内容となっていることがわかりました。
前の番組では、スポンサーが提供した食事プログラムが選手に受け入れられて、改善に成功したような内容でしたが、実際には改善ができていなかったということで、それを出してしまったら、スポンサー企業のマイナスのイメージにもなってしまいます。テレビ番組で、わざわざ伝えてデメリットを表現するようなことはしないということなのでしょう。
その選手の食事は、今どきの若い選手だけでなく、若者に共通している肉食習慣でした。魚も食べず、豆類も食べず、たんぱく源は肉だけです。アスリートが食べている脂肪が少なくて高たんぱく質の鶏肉ではなくて、牛肉が中心でした。牛肉は、他の肉類と比べても飽和脂肪酸が多くて、さまざまな問題点が指摘されていますが、簡単にまとめると「血液ドロドロ系」の脂肪となっています。
牛肉が悪いと言っているわけではなくて、そこに不飽和脂肪酸が多い魚類を食べて、たんぱく質も大豆・大豆製品から摂るということをプラスすればよいのです。それはスタッフもわかっていて、食事の工夫をして、不足しているものを食べさせるようにして、それで好結果が出ているという番組の内容でした。しかし、実際にはどうなのかというと、オリンピックを前にしたドキュメント番組では「野菜は年に1回くらい」という驚きの発言が本人からありました。それでオリンピックの最高の体調とモチベーション、好成績で臨めるのならよいとしても、そうではないことが番組で取り上げられていました。
番組を見ている途中で、健康関連の学会の代表から電話があって、私どもが抱いた印象と同じ指摘がありました。「先生の考えを伝えるようにします」と言っておきましたが、同じように感じる人は多いということです。
改善しなくても金メダルが獲得できるなら、私たちの心配は杞憂だったということになります。もちろん杞憂で終わることを望んでいるわけですが、その結果を期待して待つことにしています。