高血圧の基準が変わっても大丈夫か

アメリカの心臓病学会と心臓協会が2017年に高血圧ガイドライン変更で収縮期血圧を130mmHg、拡張期血圧を80mmHgに引き下げました。アメリカに追随する傾向が日本の学会にはあり、日本高血圧学会の2019年の高血圧治療ガイドラインでは、基準値は従来どおりの140/90mmHgを変更しないものの、合併症がない75歳未満の場合には130/80mmHg未満に引き下げられる方向で検討が進められています。ガイドラインの刊行は4月中となっています。
高血圧の分類は、現状では130〜139/85〜89mmHgが正常高値血圧、120〜129/80〜84mmHg未満が正常血圧、120/80mmHg未満は至適血圧となっていますが、新たな分類では130〜139/85〜89mmHgは高値血圧、120〜129mmHgかつ80mmHg未満が正常高値血圧、120/80mmHg未満は正常血圧と変更となります。新ガイドラインでは130〜139/85〜89mmHgは高血圧には分類されないものの、リスクが上昇することから正常高値血圧から正常がなくなって高値血圧となります。
確かに、正常という名前がついていると血圧が高めであっても大丈夫なのだというイメージを抱かれがちですが、血圧が高いと動脈硬化の危険度が高まるということを意識しにくくなるので、今回の名称変更は意味があることだと考えられています。
高血圧は血圧の状態によって3種類に分類されていて、これは新ガイドラインでも変更はなくて、140〜159/90〜99mmHgがI度高血圧、160〜179/100〜109mmHgがII度高血圧、180/110mmHg以上がⅢ度高血圧となっています。
140mmHg未満なら安心できるのかということですが、合併症がある人の場合は通常の基準ではリスクが高まります。冠動脈疾患、蛋白尿陽性の慢性腎臓病、糖尿病では130/80mmHg未満とされています。どれも血管にダメージを与えることから、低めに設定されています。また、75歳以上の高齢者、蛋白尿陽性の慢性腎臓病、脳卒中既往では140/90mmHg未満となっています。複数の疾患があると高血圧によって危険度が高まっていくので、できれば運動療法と食事療法に取り組んでもらいたいのですが、それと同時に年齢を重ねると血管が硬くなることから正常な血流を保つためには血圧を上昇させないといけないために、年齢を重ねるほど他の生活習慣病には注意が必要だということを認識してもらいたいということです。