高齢者になってからの対策で健康維持できるのか

厚生労働省の国民健康・栄養調査は、継続的な健康と栄養に関する調査に加えて、それぞれの年によって特集的な調査を行っています。最新の平成29年の調査では、健康状態に影響する高齢者の調査を行い、その結果を発表しています。国民健康・栄養調査は年代別に分類しているので、高齢者のデータといっても65歳以上の前期高齢者と75歳以上の後期高齢者ではなく、60歳以上のデータとなっています。
これによると、身体を自由に動かすために必要な骨格筋の状態を示す骨格筋指数は男女ともに加齢につれて減少しています。骨格筋指数の平均値は男女ともに、たんぱく質の摂取量が多い人ほど高く、肉体労働をしている人ほど、また肉体労働の時間が長い人ほど、男女ともに高くなっている結果となっています。
生活の様子について前期高齢者と後期高齢者で比較していますが、「週に1回以上は外出している」「椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっている」「日用品の買い物をしている」「食事の準備をしている」という項目では、男性は後期高齢者のほうが低くなっているものの、女性に比べると差は小さくなっています。女性のほうが年齢を重ねると生活の状態が悪くなることを示していますが、これは骨格筋の筋肉量の少なさが影響しています。
噛んで食べるときの状態と歯の保有状況については、「何でも噛んで食べることができる」人の割合と20歯以上を有する人の割合は60歳代から大きく減少しています。65歳以上の高齢者のうち「何でも噛んで食べることができる」人の低栄養傾向の割合は、男性が10.2%、女性が18.0%で、男性は噛めなくなると急に栄養状態が悪くなり、たんぱく質不足から骨格筋が減少していくために活動ができなくなる可能性が高いことを示しています。
ここまでのことは当たり前の結果ですが、高齢者の健康づくりを考えるときには、この当たり前のことが大事になります。
骨格筋の強さは骨の状態も影響しています。高齢者は全体的にカルシウムの摂取量は多くなっているものの、60歳代(60〜69歳)の充足率は男性が79%、女性が84%と、まだまだ少ない状態です。60歳になってからではなく、その前からカルシウム摂取を増やしてほしいのですが、国民健康・栄養調査の結果を見ると、将来が不安となる状況です。これについては次回に紹介させてもらいます。