鮭の身はピンク筋なのか

メディカルダイエットで運動について語るときに、赤筋と白筋の違いを話しています。筋肉には持久力の赤筋と瞬発力の白筋があり、その名のとおり、赤筋は赤い色、白筋は白い色をしています。赤筋には酸素を蓄積するミオグロビンとエネルギーを産生するミトコンドリアが多く、そのために酸素を用いて脂肪酸とブドウ糖を燃焼させる働きが高くなっています。筋肉の細胞は筋繊維と呼ばれる繊維状の筋肉で、複数の筋肉が束になっています。赤筋も白筋も刺激されると太くなっていき、赤筋が太くなると筋肉全体が赤傾向になり、白筋が太くなると白傾向になっていきます。
赤筋は赤身魚、白筋は白身魚にたとえられます。人間の筋肉は、赤身と白身のようにクッキリと分かれているわけではないので、赤筋と白筋がわかりにくくなっています。赤筋と白筋がうまく混じり合ったスポーツ選手向きの筋肉は、その色からピンク筋とも呼ばれています。その話をセミナーでしたところ、「魚にもピンク筋があるのでは」という質問が出たことがあります。その質問を聞いた瞬間に、何を言いたいのか、すぐにわかりました。
鮭の身の色はサーモンピンクと呼ばれるのでピンク筋と思われるかもしれませんが、鮭は白身魚です。それなのに白い色ではないのは色素のアスタキサンチンが含まれているからです。アスタキサンチンは藻に含まれる緑色の色素ですが、これが藻を餌にしているオキアミやエビ、カニの身体に入ると赤い色になります。アスタキサンチンの赤い色が白身に加わるとピンク色になります。このアスタキサンチンは卵、つまりイクラの赤い色になります。産卵したあとの鮭は色が薄くなります。アスタキサンチンを卵に移し、子孫に伝えていくことで、生命維持のための抗酸化力も伝えているのです。
こういった話をすると、ピンク色の魚を食べればピンク筋がつくのではない、ということがわかってガッカリさせることにもなるのですが、ピンク筋をつけるためには赤筋を増やす有酸素運動と、白筋を増やす無酸素運動を継続して行うしかない、ということを話しています。