10分以上のウォーキングで認知症は予防できるのか

10分間のウォーキングの健康効果は、さまざまな試験で実証されていますが、ただ10分間ダラダラと歩いても、それほどの効果は得られません。スタスタと元気に早歩きすることは認知症予防につながるということは以前から言われてきましたが、WHO(世界保健機関)から初めて発表された認知症予防指針では、禁煙、正常な血圧維持、栄養摂取など12項目が掲げられ、その中での有酸素運動が重要項目として取り上げられています。
WHOによると、認知症患者は世界に約5000万人いて、これが2050年には3倍以上の1億5200万人になると推計されています。2050年の世界人口は90億人と推計されているので、1.7%ほどになります。超高齢社会の日本に比べると、まだ少ないように感じるかもしれませんが、認知症の予防が少しでも進めば、それだけ社会的な負担が減ることになります。
WHOが推奨する認知症予防のための有酸素運動は65歳以上の高齢者の場合には1週間に150分以上で、負荷レベルは中強度となっています。中強度というのは、なんとか会話をしながら歩ける速度を指しています。指針によると1回の有酸素運動は10分以上とされているので、1日に2回の有酸素運動をすることが求められているわけです。
ただ歩いていれば認知症が予防できるわけではなくて、高血圧も糖尿病も脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)も認知症リスクを高めます。多量の飲酒を避けること、肥満にならないように体重を一定に保つこともすすめられています。一般にいわれているバランスのよい食事は基本中の基本で、野菜や果物を1日に400gを摂ることがすすめられます。糖質が多い芋類は、ここでは野菜には含まれないので注意が必要です。肉の量は少なくして、オリーブオイルもすすめられていて、このことから地中海料理が目標とされているのがわかります。
サプリメントの使用による認知症予防は多くの研究が実施されているところですが、この指針ではビタミンB群、ビタミンE、不飽和脂肪酸、抗酸化物質、イチョウ葉エキスなどは認知症のリスクを低下させる効果が確認されていないとして推奨されていません。