74歳までは介護される側から介護する側になるのか

高齢者は65歳以上と定義されています。そして、75歳以上は後期高齢者と区分されています。となると、65歳から74歳までは前期高齢者と区分されるわけです。この区分は、もともとは老年学の世界で使われてきた言葉で、75歳以上になると複数の疾病を発症しやすくなり、入院期間が長くなり、自立した生活を送ることが難しくなることから、75歳が分岐点とされるようになりました。
2006年には「高齢者の医療の確保に関する法律」が成立して、2008年から75歳以上を切り離した後期高齢者医療制度が発足したことで、後期高齢者は一般に使われる言葉となりました。この医療制度によって、医療費の自己負担が69歳までは3割負担、70歳以上は2割負担、75歳以上は1割負担の原則となったわけです。
高齢者の区分については、日本老年学会と日本老年医学会は、75歳以上を高齢者とすることを提言しています。今の高齢者は平均寿命が長くなっただけでなく、心身の状態が10年は若くなっていることを理由としてあげています。この提言では65歳から74歳は准高齢者として、介護ということでは介護を受ける側ではなく、むしろ介護に協力をする立場であるべきとされています。少なくとも介護を受ける立場ではなくなってほしいという願いが込められています。
年齢を重ねても健康で、元気でいるなら介護を受けることなく過ごすことは可能です。しかし、一転して介護をする側になると、それなりの知識と技術、経験は必ず必要です。介護をする専門職である介護福祉士は国家資格で、誰もが代わりができるような仕事内容ではありません。となると、介護する側として期待される内容は何なのかというと、介護のサポートです。専門の介護福祉士が家庭を訪問して、すべてのことをこなすのでは手間がかかりすぎます。今後、高齢者が爆発的に増えて、要介護者も急激に増えていく中では、少しでも専門職の手間を減らして、専門性を活かすことに力を注いでほしいと願うのは当然のことです。
介護保険制度の分類では、要介護と要支援に分かれます。要介護は介助が必要な状態で、程度によって5段階に分けられています。要支援は食事や排泄などは自分でできるものの日常生活の一部に介助が必要な状態で、2段階に分けられています。介護保険制度の改正によって、要介護については専門職しか担えないのは過去と同じですが、要支援は専門職以外も担うことができるようになりました。まさに専門職には専門の仕事をしてもらうための改正です。
要支援としては室内の掃除や洗濯、買い物、外出の補助など、家族が同居していれば家族が担っているような内容ですが、これは人手がなければ実施できないことです。これを地域の方々がグループを作り、自治体との連携によって、それなりの手当てをいただきながら実施しています。介護にかかる費用を実際に必要なところに手厚くするために要介護での介護事業者が受け取る金額は増えました。そして、要支援の金額は減りました。それによって介護事業者の収入が増えればよいのですが、要支援の受け手がないところでは介護事業者が担うしかなく、かえって介護事業者の負担を増やす結果ともなっています。
このようなことがないように、制度改正をよい方向に持っていくためには、要支援を65歳から74歳が担うことが期待されるわけですが、その人材が健康で元気でなければ実現することも、それを継続させることも難しくなります。そこで私たちは、65歳以上だけでなく、60歳くらいの年齢から自らの健康づくりのためと、身につけた健康づくりの手法を要支援者に活かすことができるように、歩くことをスポーツにするインターバルウォーキングを資格認定方式によって実施しています。