75歳以上の医療費が2倍になる日

一生涯に使われる生涯医療費は2700万円にもなっています。そのうちの半分は70歳以上で使われていて、平均寿命が80歳を超えたばかりの男性は、わずか10年の間に1350万円もの医療費を使っていることになります。1年間に135万円となり、このうち健康保険の自己負担の分が個人の懐から出ているわけです。私たちが日本人の体質と長寿社会について述べるときに、よく使っている厚生労働省のデータで、これはメディアに情報提供とともに考え方も伝えていることから、よく質問が寄せられることです。
2018年は後期高齢者の数が前期高齢者の数を超えることが人口統計から明らかにされています。
医療費のうち個人で支払う以外は国や自治体、健康保険組合が支払っています。すべてを国が支払っているわけではないのに国家予算の半分が医療費負担となっています。高齢になるほど医療費がかかるということは、その対策を練っておかないと国として大変なことになります。
現在の医療費の自己負担は69歳までは3割です。今では忘れられてしまっているかもしれませんが、過去には65歳以上の高齢者は定額負担で済んでいた時代があり、それが1割負担になったときには大騒ぎになりました。この定額から定率に変わったのは2001年(平成13年)のことです。それ以前はというと、1973年(昭和48年)に老人医療費がゼロであったのが、1983年(昭和58年)に入院が1日300円、外来が月に400円となり、1997年(平成9年)には入院が1日1000円、外来が1日500円(月4回まで)となりました。
2002年(平成14年)には1割負担は同じですが、高齢者であっても現役並みの所得者は2割負担となりました。2006年(平成18年)には現役並みの所得者は3割負担となり、2008年(平成20年)には前期高齢者は2割負担(現役並みの所得者は3割負担)、後期高齢者は1割負担(現役並みの所得者は3割負担)となり、現在も続いています。
これの見直し案として出てきたのが、後期高齢者の自己負担を2割に引き上げる案です。後期高齢者は2018年に前期高齢者を超えて、これが逆転して元の状態になることはなく、団塊の世代がすべて後期高齢者になる2025年からは、さらに加速化していくのは誰もが理解できることです。
今でも生涯医療費から計算した後期高齢者の自己負担が年間13万円であるので、「2倍の26万円になるのか」と言った雑誌編集者がいましたが、それは生涯医療費が同じであった場合の話で、生涯医療費も年々増えています。年間30万円を超えるのはごく近い将来のことで、2025年には40万円を超えているかもしれないということを伝えています。