8000歩も早歩きをしないといけないのか

全国放送の番組の中でウォーキングが取り上げられ、ウォーキングのツアーを二つ紹介していました。一つは観光ツーリズムでのウォーキングで、自然と観光を楽しみながら健康になることを目的とするツアーでした。その中で専門家が話していることにもツッコミたいところは複数あったのですが、それよりも気になったのが二つ目のウォーキング教室としてのツーリズムの紹介でした。1日に目指すべき歩数は1万歩ではなく、8000歩であることを中之条研究の成果をあげて紹介していました。これはよいことなのですが、歩数と健康効果の表のタイトルに「8000歩の早歩き」と表示されていて、これには驚きました。
この番組が終わって、すぐにテレビ局のディレクターからメールが来ました。「いつから8000歩も早歩きしなければいけなくなったんですか」という内容でしたが、あれは間違いであることを即座に返答しました。
中之条研究は群馬県吾妻郡中之条町の高齢者全員(約5000人)の歩数と健康状態を調べたもので、13年が継続した今も研究は続けられています。それによると高齢者は1日に8000歩を歩いて、そのうち20分間は早歩きをすることが最も健康状態がよいことが確認されています。1日に8000歩というのは朝起きてから夜に寝るまでの間のすべての歩行の数であって、ウォーキングの歩数ではありません。ウォーキングで8000歩を歩き、これに日常の歩行を加えたら、活動的な人では1万2000歩を超えます。中之条研究では毎日1万2000歩以上を歩くのは健康に害が出ることがあることを指摘しています。
20分間の早歩きでよいとされているのに、早歩きを8000歩と放送されて、それを信じて頑張って歩き過ぎたら健康被害を起こすことにもなりかねません。一番真面目と認識されている全国放送で、こんなことを伝えられたら何が起こるかわからないので修正が必要と思っているのですが、いまだに修正はされていません。早歩き8000歩としたテレビ番組は録画して、その場面はプリントもして、これから講習のよいネタとして使うところから始めるようにします。