90歳は「そろそろ」ではなく「まだまだ」

男性の平均寿命が80.98歳と81歳に迫り、女性は87.14歳と87歳を超えた今(2016年調査)、男性なら90歳を、女性なら95歳を超えたら随分と長生きだと思われています。しかし、2017年の敬老の日に発表された90歳以上の人口は約206万人にも達しています。そのうち100歳以上は6万7800万人以上となっているので、90歳代は約200万人もいることになります。男性で90歳になった方が「そろそろ」と弱気のことを言っていましたが、90歳代が約200万人という事実を知ると、「まだまだ」と言わなければならない立場だということがわかります。
平均寿命というのは、その年に生まれた人が同じ環境と経済状態で過ごしたときに何歳まで生きられるかの推定値で、0歳の平均余命が一般的な平均寿命となります。年齢が上がるにつれて平均余命は短くなるわけですが、90歳の平均余命は男性が4.38歳、女性が5.70歳です。これに従うと男性は94.38歳、女性は95.70歳と、まだまだ4〜5年は大丈夫という状態になるわけです。
90歳代を無事に通り抜けて100歳まで行くことができるのは6万7800人ほどということで、平均で語るのはふさわしくないことはわかっていますが、1年間に20万人ずつが長生きレースから脱落していく計算になります。90歳まで長生きした人は、もともと身体が丈夫であったので、これからも同じような環境と生活を続けていれば元気でいられる、と考えたいところですが、平均寿命が男性が81歳、女性が87歳の時代となると90歳の大台になったところで急に体力、気力、免疫力、恒常性保持能力などが落ちていく時期だと考えたほうがよさそうです。
ということで、それに心当たりがある人は、まだまだ90歳まで10年、20年、30年あるという段階でも、いろいろと改善に取り組むところがあるはずです。では、ずっと健康のために取り組んできたことがあって、この調子なら90歳を楽々とクリアできる見通しが出てきた人はどうなのかというと、ここで気を緩めてもよいという話ではありません。
内臓の健康も脳の健康も足腰の健康も、その保持には自分の力で歩けて、日常的に身体を動かしていることが前提となっています。身体を動かすことで、生命維持の基本となるエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が細胞の中で作り出されます。そのエネルギーを使って、臓器も器官も正常に働くようになるので、エネルギーを作り出すために身体を動かすことが必要条件になります。高齢になってから身体を動かすことは足腰の健康のため、寝たきりにならないためにすること、という消極的な考えではなく、全身を細胞レベルから働かせて、エネルギーを充分に使って好きなことができるようにすることという積極的な考えで身体を動かしてほしいのです。
それもあって、私たちは高齢になっても歩く能力を保持していくことができる2本のポールを使って歩くノルディックスタイルのウォーキングをすすめています。ノルディックスタイルのウォーキングはスポーツ感覚のノルディックウォーキングと高齢者向けのポールウォーキングがあります。高齢者だからといってポールウォーキングだけにするのではなく、体力や健康状態、目標などによって使い分けをしています。