HbA1cは脳の酸素供給に影響する

血液中を流れる赤血球にはタンパク質のヘモグロビンが含まれています。ヘモグロビンは酸素と結びついて、酸素を全身の細胞に運ぶ働きをしています。このヘモグロビンにブドウ糖が結びついたものがヘモグロビンA1c(HbA1c)で、この量が糖尿病判定の指標の一つとなっています。赤血球の寿命は120日といわれ、血液中のブドウ糖が多い時期が長くなるとHbA1cの割合が多くなります。そのために2〜3か月の血糖値の高さを示す指標となっているわけです。
HbA1cが高いと何が起こるのかということですが、全身の細胞の糖化の度合いを知るために使われています。糖化は細胞の老化を引き起こすもので、年齢以上に身体が老化するエイジングの度合いを知るためにも活用されています。HbA1cに変化すると、ヘモグロビン本体の重要な働きである酸素を運ぶ能力が低下します。“低下します”という表現は実は正確ではなくて、HbA1cになると酸素は結合できるものの酸素を離すことができなくなります。
酸素はヘモグロビンと結びついて血管の末梢まで運ばれて、そこで酸素の結びつきを解いて酸素を細胞に届けています。HbA1cとなって酸素を結合しても離せなくなるということは、その分だけ酸素の運搬能力が低下して、細胞に届けられる酸素も減ってしまいます。
脳には酸素が必要だということは一般に理解されています。酸素で脳が働いているという印象があるかもしれませんが、脳細胞は酸素を用いて、脳の唯一のエネルギー源のブドウ糖をエネルギー化させています。少しだけ詳しく説明すると、ブドウ糖が脳細胞のミトコンドリアに取り込まれるときにR‐αリポ酸(天然型のα‐リポ酸)が必要になり、ミトコンドリアの中のTCA回路でブドウ糖から変化したアセチルCoAがエネルギー代謝するときに酸素が使われます。酸素不足は脳細胞を働かせるためのエネルギー不足を起こすということです。
血流が低下すると酸素の供給量が減り、脳細胞のエネルギー量が減るために、認知機能をはじめとした脳の機能が低下することになるのです。
α‐リポ酸については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。