LDLとLDLコレステロールの認識ギャップ

「LDLコレステロール=悪玉コレステロール」というのは、あまりに一般的な認識で、ほとんどメディアはLDLコレステロールが高い状態は危険だという切り口の報道、番組作成をしています。それは大筋では正しいことですが、伝え方によっては間違いになることもあり、そこは私たちが情報発信するときには注意しています。しかし、注意が届かないこともあり、的確な資料も提供したのに図の説明が違っていて間違い情報を流したり、コメントの先生が的確な伝え方をしてくれなかったために、肝心な対処法が伝わらないということもあります。
悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL(low-density lipoprotein)は、低比重リポたんぱく質のことで、肝臓で合成されたコレステロールを血液中に運ぶ役割をしています。コレステロールは細胞膜の材料、胆汁酸とホルモンの原料であり、LDLは生命維持に重要な役割を果たしています。だから、LDLは悪玉ではなく善玉ではないかと言っているのですが、あまりに著名な先生が悪玉コレステロールと命名したことから、私たちの努力は通じない結果となっています。
LDLが血液中に多くなりすぎると、全身に運ばれるコレステロールの量が多くなり、血液中に蓄積することで動脈硬化のリスクが高まります。だから、悪玉とされていて、逆に余分となったコレステロールを肝臓に運んでいくHDL(high-density lipoprotein=高比重リポたんぱく質)は善玉コレステロールとも呼ばれています。
動脈硬化に影響するのはLDLではなくて、LDLが運ぶコレステロールで、このLDLによって運ばれているコレステロールがLDLコレステロールです。LDLは悪玉ではなくて、LDLによって運ばれたLDLコレステロールが増えすぎると悪玉とされるわけで、ここと間違うとコレステロールが悪玉だという表現をされて、間違った認識をする読者や視聴者を増やすことにもなります。
コレステロールが悪玉だと思い込んで、コレステロールが多く含まれる卵を食べないという人もいましたが、コレステロールの吸収率は50%ほどでしかありません。吸収されても、血液中のLDLコレステロールを大きく高めるわけではありません。というのは、コレステロールは生命維持に重要な役割をしていることから、肝臓で合成されています。血液中のコレステロールの70%以上は肝臓で合成されたコレステロールとなっています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」ではコレステロールの上限値は示されていません。これは多くの試験によって、食品に含まれるコレステロールを多く摂っても健康に影響しないことが確かめられたからです。それにも関わらず、たまたま目にしたテレビ番組でコメントの先生が動脈硬化予防に卵を食べすぎないことを発言していました。これは古いままの情報で語っていた先生の責任というよりも、制作側の責任、もっと言えば情報を伝えきれなかった私たちの責任ではないかと反省しているところです。