LDLとLDLコレステロールは同じなのか

NHKの健康をテーマにしたバラエティ番組で、脂質異常症をテーマとして医師や患者も登場して、幅広く紹介していました。一般向けの番組なので、わかりやすくすることを心がけているのは伝わってくるのですが、気になったのは「LDLコレステロール=悪玉コレステロール」と表記されていたことです。コメントをする複数の専門家は“LDL”という言葉は使わずに、全員が“悪玉コレステロール”のほうを使っていました。これは専門家としては“LDLコレステロール”という言葉を使いにくいという気持ちもあってのことだと思って見ていました。
LDLは低比重リポ蛋白(Low-Density Lipoprotein)で、コレステロールを全身に運ぶ役割をするリポ蛋白です。これは脂質とタンパク質によって構成されています。コレステロールは脂質で、血液中では水と油の関係で、そのまま血液中に入ると固まって流れにくくなります。そこで親水性のあるリポ蛋白が肝臓の中のコレステロールを積み込む形で血液中を通過して全身に運んでいるのです。つまり、LDLはトラックのようなもので、その荷物がコレステロールという関係です。
LDLが運んでいるコレステロールがLDLコレステロールです。LDLが血液中で多いということはコレステロールが多く運ばれていて、これら動脈硬化のリスクを高めるということから悪玉コレステロールと呼ばれています。HDLは高比重リポ蛋白(High-Density Lipoprotein)で、積んでいるコレステロールの量が少なく、血液中で余分となっているコレステロールを積んで肝臓まで戻ってきます。そのため、HDLが多いと動脈硬化のリスクが低くなるので善玉コレステロールと呼ばれています。
血管の健康にはLDLの量とともにHDLも重要となるわけです。以前は高脂血症と呼ばれていたのが脂質異常症と変わったのは、LDLが多いことだけでなく、HDLが少ないことも問題であり、“高脂”という名称がそぐわなくなったことから変更されることになったのです。
テレビ番組では、LDLコレステロールの表示を避けていたのですが、最後になってテロップで「悪玉(LDL)コレステロール」と表示されていて、これだと「悪玉コレステロール=LDLコレステロール」となってしまうので、最後まで貫いてほしかったと感じたのは、私たちだけではなかったはずです。