NIHのHは健康か衛生か

NIHの室内照明と太ることの関係性の情報を紹介した後、メディアや読者から問い合わせが相次いだのですが、その中にNIHの和訳についての質問がありました。このサイトではアメリカのNIHを国立健康研究所と表記しました。NIHはNational Institutes of Healthの略です。アメリカ合衆国の保健福祉省公衆衛生局内の研究組織です。1万8000人以上のスタッフのうち6000人以上が研究者で、過去のノーベル賞受賞者が100人を超えるという、さすがアメリカと感じさせる規模です。
「Health」を私たちは「健康」と訳しましたが、発足当時は感染症予防の公衆衛生が主な仕事であったことから、その当時は「衛生」でよかったとは思います。所属しているのが公衆衛生局であることもあって、日本では国立衛生研究所と長らく言われてきました。室内の照明を点けて寝ている女性は太りやすいという情報を伝えたテレビ番組でも国立衛生研究所と表記していました。NIHが現在では、がん、老化、認知症、アレルギー、アルコール依存症、ヒトゲノムといった旬の研究をすることが増えました。健康系の研究が中心になっているので「健康」が相応しくなっています。
そもそも論ですが、「Health」は辞書で引くと当然のように「健康」が一番に出てきます。次いで医療、衛生が出てきます。日本版NIHと呼ばれる組織があって、これは日本医療研究開発機構を指しています。健康でないとしたら医療でもよいとの考えもありますが、少なくとも衛生ではないように感じています。
WHO(世界保健機関)は「Health」の定義をしていますが、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう」(日本WHO協会の和訳)となっています。また、そもそも論ですが、WHOはWorld Health Organizationの略で、団体名称としては「保健」としています。保健を辞書で引くと「Health」と出てきます。保健は国語辞書的には「健康を守り保つ」ことを指しています。ここから見ても「Health」は健康でよいのではないかと考え、NIHを国立健康研究所としています。
この話を聞いて、「NIHは細菌兵器などのテロ対策の研究もしているから衛生でよいのでは」と言ってきた方もいましたが、公には、まだ結論が出せないということかもしれません。