生涯医療費の半分は70歳以降に使われている

長寿社会は喜ばしいことではあるものの、長生きすればそれでよいというわけではないのは当然のことです。“健康長寿”という言葉があるように、健康を維持したままの長寿、つまり自立したまま寿命を迎えるという幸せな長生きでありたいと多くの人が願っているはずです。血圧や血糖値が高めの状態であって、治療を受けていても大きな病気にならなければ、それほど多くの医療費はかからないことになります。
しかし、日本人の生涯医療費の統計(厚生労働省発表の平成27年度推計)を見ると、男女平均では2700万円の医療費が使われ、そのうち70歳未満で50%、70歳以上で50%と、高齢になってからの医療費が大きな負担となっていることがわかります。これは個人が支払った金額ではなくて、本人の他に国や地方自治体、企業・健康保険組合などが支払っている医療費全体を指しています。
男性の生涯医療費は2600万円で70歳未満が53%、70歳以上が47%となっているのに対して、女性は2800万円で70歳が47%、70歳以上が53%となっています。この差は70歳を超えてからの寿命の長さに関係していて、長生きするほど病気が増えて、医療費もかかっていることになります。そして、高齢者の本人負担は1割であっても、それ以外の9割は公的なお金や組合のお金が使われているので、社会的な負担を増やしていることに間違いはないことです。
生涯医療費(男女平均)の推移を見ると、2006年と2007年は2200万円、2008年と2009年は2300万円、2010年は2400万円、2011年と2012年は2500万円、2013年と2014年は2600万円、そして2015年(平成27年)に前年より100万円増えて初めて2700万円となりました。10年間で500万円も増え、1.2倍以上になっていて、いかに高齢者の医療費が増えているかがわかります。平均寿命の延びと比較しても医療にかかる費用は増えすぎているわけです。