仕事は「一本立ち」と「分業」に分けて考えるべきだということを初めて教えてくれたのは、大学生時代に教えを乞うていた文筆家の先生でした。今から50年も前のことです。
そのときの強い印象と奥深さが心に残っていて、それ以降に同様のことを経営論、ビジネス論として教えてあげようという調子で語ってくれた方もいたのですが、初めの印象を更新するほどの感激が得られることはありませんでした。
この間の50年間には、さまざまな人との出会いはあったものの、最初のインパクトを超えることはなくて、だからこそ一期一会の感覚で出会った方々と付き合うようにしてきました。
「一本立ち」と「分業」は、どちらも独立性と専門性を意味していて、組織体制において重要な概念となっています。
一般的な解釈から書いていくと、「一本立ち」は、1人で独立して事業を行うことや、特定の役割を独立して遂行することを指しています。
組織から独立して個人事業主になることや、組織の中にいても独立性をもって(自由度が認められた状態で)仕事ができる立場の人が例としてあげられています。
それに対して「分業」は、大きな作業を複数の人が役割分担をして行うことを指していて、効率化や専門家を図ることを指しています。
業種によっては分業が成り立たない場合があることを承知していて、あえて書くと、現在のビジネス社会は分業でありながら、それを取りまとめる一本立ちが求められるところがあります。
簡単に表現するとゼネラリスト(generalist)とスペシャリスト(specialist)ということになるのかもしれません。
では、自分の場合は、どちらなのかというと、ゼネラリスト(一本立ち)ではなくて、スペシャリスト(分業)を積み重ねて形づくってきたところがあります。
大きな話は別の機会に書かせてもらうことにして、今も続けている原稿や企画の作成では初めから最後まで続けて仕上げていく“通し仕事”が普通の感覚とされています。
原稿を書くときには、一気に最後まで書く、そのためにモチベーションを高めて、気力と体力を充実させてから原稿用紙に向かうということです。
ゴーストライターとして単行本の原稿を手書きしていたときには、こちらが当たり前のことでした。というのは、限られた時間の中で原稿用紙(400字詰め)300枚分を仕上げるためには、分割して書けるところから書いて、後でまとめるということをする余裕はなかったのです。
ところが、文章作成ソフトが当たり前の世の中になると、バラバラに書いた(文字打ちした)文章を整理して一本化することは普通にできるようになって、“細切れ仕事”の積み重ねが簡単にできるようになりました。
しかし、そのために勢いをつけて表現していくということができにくくなってきました。
それでも細切れ仕事の積み重ねが認められる世の中になって、手が自由に動かないことがある、目で見ることが長く続かないということでも、そのときの調子によって進めたり休んだりして、後で組み合わせて帳尻合わせができるようになったので、この年齢でもこなせているというところがあります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕