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健康の専門家として食事に関する指導を期待しても、期待をかなえるだけの結果が得られにくいのは、医師養成機関である大学の教育内容にあるということを前回(健康リテラシー3)取り上げました。

医師を養成する医学部がある大学は82校ですが、その中で栄養学講座があるのは25校ほどです。これでも増えたほうで、以前は20校を下回っていました。栄養学講座がある大学でも必須ではなく、選択講座となっています。

選択をして学べば、栄養学の知識を充分に持った医師が養成されることが期待されるかもしれないのですが、講座で学ぶのは栄養不足と疾患の関係がほとんどで、患者が期待する栄養摂取での疾患の予防や改善のための栄養学を全体的に学ぶのは難しい状態です。

これは医療制度にも関係があり、医師が栄養指導をしても保険点数がつかない制度となっています。保険点数がつくのは医療機関の管理栄養士による栄養指導です。医師の養成講座では学ぶべきことが数多くあり、指導をしても保険点数がつかない栄養学を学ぼうとする意欲が削がれるのは、ある意味で仕方がないです。

医療機関の入院患者のための食事療法は、医師の約束食事箋に従って管理栄養士が献立にすることから、病院に勤務していれば実践的に栄養学を学ぶ機会もあります。また、栄養学の知識は医療にとっては重要なことであることから、日本臨床栄養学会は医師が医学に対応する栄養学を学ぶ機会を設けています。これに積極的に参加することで臨床栄養を学ぶことはできます。また、日本臨床栄養学会の認定臨床栄養医、認定臨床栄養指導医であれば、より深い栄養知識がある医師であることが確認できます。

しかし、栄養指導による保険点数の制度のために、積極的に最新情報を得ているとは言いにくい状況があり、生活者が医師に期待する栄養情報を得にくい状況もあります。医学や健康に関わる情報は日進月歩が激しく、古い情報は間違いにもなりかねません。

そのような状況から、どのような情報を得ているのかを確認してから、健康リテラシーを向上させるための指導を受けなければならないのが実情ということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

高齢者は以前に比べると心身ともに若くなっていることが指摘されています。

それを証明するように、後期高齢者の数が前期高齢者の数を超えた前年(2017年1月)に日本老年学会と日本老年医学会が、高齢者の定義の変更を提言しました。2013年に高齢者の定義を再検討する合同ワーキンググループを立ち上げ、高齢者の心身の健康に関する各データを検討して議論を重ねてきた結果です。

現在の高齢者の定義は65歳以上となっています。74歳までは前期高齢者、それ以降は後期高齢者と分類されています。

しかし、歩行速度、握力、血清アルブミン濃度(血漿中のタンパク質の濃度で肝臓と腎臓の働き、栄養状態を示す)、骨の強度、残存歯数などのデータから、現在の高齢者は10〜20年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が5〜10年遅延して、若返り現象がみられています。特に65〜74歳の前期高齢者は心身の健康が保たれていて、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めていることがわかりました。

健康度の向上については歯の健康と残存歯数が影響していることは、これまでの連載の中で明らかにしてきたところです。

これらを踏まえて、ワーキンググループでは65〜74歳(前期高齢者)を准高齢者、75〜89歳(後期高齢者)を高齢者、90歳以上を超高齢者と区分することを提言しました。そして、准高齢者は支えられる側ではなく、高齢者を支える立場であるとしています。

65〜74歳(現状の前期高齢者)は超高齢社会を支える立場であるというのは、これまでの健康状態に基づいての提言です。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

健康食品の形状といえば、錠剤型、カプセル、粉末、液体などがあります。機能性表示食品の登場から、見た目は食品であるのに健康食品と同じ有効性を打ち出し、その有効性を求めて購入されているものもあります。機能性が表示されていなければ、他の食品と同じようなものであっても、高めの価格でも販売されるのが機能性表示食品の特徴です。

同じようなものということで、よく例にあげられるのは酵素です。酵素は動物や植物の細胞の中にある生化学反応を起こすためのタンパク質で、酵素によって生化学反応が早く、強く起こるようになります。

酵素は生きている動物や植物の中で働くものもあるのですが、これを取り出して健康食品の素材として使われています。その加工法によって、有効性が異なってきます。異なるというよりも、効果があるものと、まったくと言ってよいほど効果がないものとに分かれてしまいます。

その違いを起こしているのは温度です。タンパク質は温度によって状態が変わります。これは卵を思い起こしてもらうとわかりやすいかと思いますが、42℃を超えると変化し始め、60℃を超えると固まって、それ以上は変化しなくなります。簡単にいうと生卵が半熟になり、茹で卵になるのと同様のことです。

酵素を取り出すには動物の場合には加熱して粉末にするか、植物の場合には発酵させる、といった方法が使われます。そのときに温度が42℃に達しないようにしないと性質が変わってしまいます。

42℃以下で加工したものも42℃を超えたものの、見た目は同じ粉末なので、この事実を知らないと酵素の機能がないものを、ありがたがって摂取することにもなります。その例として、次回は“ミミズの酵素”について紹介します。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

「混ぜるな!危険」というと、洗剤を混ぜて使うと有毒ガスが発生する危険を知らせる表示で、実際に混ぜてはいけないのは塩素ガスを発生させる酸性の洗剤と塩素系の洗剤の組み合わせです。

今回の「混ぜるな!危険」は、発達栄養というテーマでのことなので、子どもの発達に必要な栄養摂取について語っています。通常の食品は混ぜたら危険になるようなことはなくて、あえてあげるなら発がん性が指摘されるニトロソアミンを体内で合成させる要因となるアミンと硝酸の同時摂取くらいです。

アミンは動物性食品に含まれていて、中でも魚の干物に多く含まれています。硝酸は野菜に含まれる成分で、化学肥料を多く使うと野菜に多く残るようになります。特に多く含まれるのは緑の葉野菜です。

一緒に摂取することで合成されるので、別の機会に離して食べることがすすめられるのですが、メニューを自分で選べない子どもの場合には保護者の知識と選択が大切になってきます。

子どもの味覚は、甘いものから多くの種類の食品を食べていくうちに徐々に酸味、苦味、渋味、辛味がわかるようになり、それぞれの味が組み合わされた複雑な味も感じ取るようになっていきます。

初めは単品の食品の味をわかるようにして、だんだんと混ざった味がわかるようにしていくのが一般的ですが、発達障害児では混ざった味が受けつけられないことがあります。どの味が苦手だということではなくて、単品では食べられる食品であっても混ざると食べられない、食欲がわかないということです。

これは食品が混ざって、危険を感じさせるということではなくて、それぞれの味を判別して楽しみたいのに、味覚、嗅覚、触覚の限界を超えた刺激となって押し寄せると、食べること自体に拒否反応が起こるようになります。

いろいろな食品を混ぜることで多くの種類の栄養素が摂れるようにしてあげることを否定するわけではありませんが、味や食感などが混ざることで不安を感じることは発達障害に限らず成長過程では起こることなので、それを理解して調理を考える必要があるのです。

健康長寿を考えるときに「PPK」という言葉が使われます。これは「ピンピンコロリ」を略したもので、1980年代に始まったピンピンコロリ運動に由来しています。「病気に苦しむことなく、元気に長生きして、コロリと死のう」という天寿を全うすることを意味する標語です。

病気だけでなく、長く介護を受けることは本人にとっても家族にとっても苦しいことで、苦しさと不安を抱えた期間を、できるだけ短くしたいと考えるのは当然のことです。日本人は男女平均で世界一の長寿国ですが、長生きした分だけ医療と介護の世話になって晩年を過ごす人が多いのは事実です。

医療や介護に頼りきりにならずに自由に動ける期間である健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳です(2019年)。その当時の平均寿命は男性が81.41歳であったので、その差は8.73年、女性が87.45歳であったので12.07年となっています。

そんなにも長い期間を医療機関や福祉施設、家庭から出ることができないまま過ごすことに抵抗がある人は多く、病気や身体の不自由さに苦しむことがない方法があるなら、それを目指したとPPKを考えるのも不思議ではありません。

しかし、PPKがかなえられたとしても、健康寿命と同じ年齢までしか自由に動けないということでは、“人生100年時代”と言われる中、あまりにも悲しいことです。そうではなくて、平均寿命を超えても元気で過ごして、病気知らずで、苦しむことなく最期を迎えるということを目指すべきです。

病気になったとしても自力で改善できる状態の“未病”を保ち、足腰も歩くことに不自由がない状態で、認知機能も正常ということを目指すためには、できるだけ早くから健康のために積極的に行動を起こすべきです。

その取り組みの成果が現れるまでは10年ほどはかかるとされていることから、健康寿命の10年前、つまり男性なら62歳から、女性なら65歳からは始めたいものです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

運動後に入浴をすると脂肪の分解が低下して、分解後の脂肪酸の代謝も低下することが知られています。それに関わっているのは脂肪分解酵素のリパーゼの働きの変化です。リパーゼは働きやすい温度帯が決まっています。

運動をして少し汗が出てくるような身体が少し温まった状態のときに筋肉のリパーゼの活性が高まります。筋肉にはリパーゼが多く、筋肉の温度が大きく関係してきます。

身体が温まりすぎるとリパーゼの活性が低下するので、それを抑えるために汗が多く出て筋肉の温度を下げてリパーゼの働きを戻ろうとします。

運動後に入浴をすると筋肉が温まっているところにお湯の温度が加わるために筋肉が温まりすぎて、リパーゼの働きが低下します。リパーゼは運動後に体温が高まっている30分ほどは活性化して脂肪分解が盛んになっています。この時間に入浴をすると分解も代謝も低下することになるわけです。

そのため、運動直後はシャワーだけにして、運動を終えて30分をすぎてから入浴することがすすめられます。シャワーは身体の表面だけを温めて、筋肉まで温めることがないからです。

この働きを促進するために使われるサプリメントはL‐カルニチンです。L‐カルニチンは全身の細胞でエネルギー産生を行っているミトコンドリアに取り込ませるために必要な代謝促進成分です。

L‐カルニチンは運動をしなくてもミトコンドリアへの取り込みが進むとエネルギー代謝が高まることが確認されています。

L‐カルニチンによって脂肪がミトコンドリアに多く取り込まれると、脂肪の分解が進んで、脂肪酸が多く作られます。そのために必要になるのは水溶性ビタミンのビオチンです。

この脂肪酸を効果的にエネルギー化させるためには、高エネルギー化合物のアセチルCoAに変化させる必要があり、そのときにはビタミンB₂、ナイアシン、パントテン酸が必要になります。

厚生労働省の厚生労働白書は、毎年発表される厚生労働行政年次報告です。毎回テーマを設けていますが、令和5年版では「つながり・支え合いのある地域共生社会」を掲げています。

単身世帯の増加、新型コロナウイルス感染症の影響による人々の交流の希薄化などを背景として、さまざまな課題の顕在化が指摘されています。「つながり・支え合い」の概念は、こういった課題の解決に向けて拡がりを見せていて、コロナ後の地域共生社会の実現を目指しています。

つながり・支え合いとして、属性(高齢・障害など)別から属性を問わない支援、世代や属性を超えた人が交差する居場所づくり、支援を待つ受動型から能動型の支援、住まいから始まる支援などがあげられています。

家族や地域のつながりが弱まっていることは以前から課題とされてきたことですが、3年にわたるコロナ禍の時期は、それに拍車をかけることになったのは間違いありません。

子どもの支援では“第三の居場所”として、家庭と学校以外の子どもたちの居場所の必要性が叫ばれてきました。第三の居場所は働く人(現役世代)の場合には、家庭と会社以外の交流の場は多く存在しています。

高齢者の場合には、仕事を卒業すると家庭以外の居場所がなくなることが多く、第三の居場所どころか第二の居場所をどうするのかの議論もされてきました。家庭に居続けることは、子どもや成人の“ひきこもり”とは違うところはあるものの、地域との交流不足は活動の低下にもつながり、超高齢社会で大きな問題となっている認知症の増加、フレイルの増加にもつながっています。

超高齢社会といっても、その基準となる高齢化率は65歳以上人口が21%を指していて、岡山県の高齢化率は30.6%にもなっています。全国の高齢化率の29.0%を上回っています。

高齢者になる前の段階からの健康対策としての第三の居場所づくりに本気で取り組む時期になっていると考えられているのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

歯の健康状態が保たれていないことは、生活習慣病の原因にもなります。

噛む回数は記憶力、認知症と相関があるとの研究結果から、かかりつけの歯科医院がないことが認知症の発症リスクを増加させることも指摘されています。

歯周病は歯を失う原因の第1位(37%)ですが、歯周病罹患率は15〜24歳で20%、25〜34歳で40%、35〜44歳で40%、45〜54歳で50%、55歳以上は55〜60%となっています。

歯が失われることによって全身に影響が出るだけでなく、菌が血管内に侵入することで脳卒中、心筋梗塞、高血圧、認知症、骨粗鬆症、関節リウマチ、妊娠合併症などを悪化させる可能性があります。

歯科健診による働く人の健康の維持・増進は、労働生産性を向上させると同時に、それは離職率を低下させることが期待されます。

歯科健診の重要性を広く伝え、企業・団体において継続的に実施できるように相談・講習・実施支援などを行うことが重要となってきます。

事業所における歯科健診は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施する健康経営の基本となり、健康投資によって従業員などの活力向上、生産性の向上などの活性化をもたらし、従業員などの定着、業績向上につながることが期待されています。

すべての健康経営を目指す企業・団体に対して、歯科健診を推奨し、歯の健康を健康づくりに加える活動に取り組むことの意義を伝え、健康づくりに必要な情報と実践法を提供することも重要となります。

歯と口腔の健康は、栄養摂取の面だけでなく、仕事の充実、集中力の向上などによって、生産性を高めることが期待されています。歯科健診によって歯と口腔の健康状態を知ることは、全身の健康度を高める重要な入口となります。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

納豆と豆腐の広報に携わってきたときに、全国納豆協同組合連合会と日本豆腐協会の名で発行するリリースを毎月発行していました。発送の対象はメディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)と流通(納豆を販売している大手企業)です。

その中で納豆と豆腐の健康面での有効性とともに、話題として扱ってもらえるようにコラムを書いていました。それぞれ3年以上であったことから、いくら同じ大豆が原材料でネタには困らなかったといっても、ネタ不足になることがありました。どこで、どちらにも使えるような内容のコラムを書いたのですが、それが両方とも使われなかったという苦い(?)思い出があります。

そのネタは「納豆と豆腐の名称について」で、どこかで納豆と豆腐の名称が入れ替わったのではないかという内容でした。

納豆は「豆が納まる」という漢字で、それに相応しいのは豆腐です。豆腐は「豆が腐る」と書いて、それに相応しいのは納豆です。日本に食べ物と文字が伝わったときに、誰かはわからないけれど取り違いがあったのではないか、という疑問を投げかけました。

このことをコラムで投げかけておいて、次のコラムでは、それぞれの漢字が実は正しいということを紹介したかったのですが、それもかなうことはありませんでした。

納豆というのは、お寺の納所と呼ばれる台所で作られていたことから「納所豆」と呼ばれていて、これが短縮されて納豆になったという由来の話です。

豆腐のほうですが、腐という漢字は中国では元は獣の肉を保存しておく状態を表した漢字で、だんだんと柔らかいものを表すようになり、柔らかい豆という意味で豆腐と呼ばれるようになりました。

豆腐の名前の由来については、今は日本豆腐協会のホームページに豆腐の歴史として紹介されて、日の目を見ています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

便通をよくして代謝を高めるためには、腸を刺激して蠕動運動を高めると同時に、便の量を増やす役割がある食物繊維を多く摂ることが大切になります。日本人は野菜の摂取量が多く、アメリカ人は少ないという印象がありましたが、日本人の野菜の摂取量が減る一方であるのに対してアメリカ人は増えていて、今ではアメリカ人のほうが摂取量が多くなっています。

それに応じて、以前は日本人の1週間の便通は平均7回、アメリカ人は平均4〜5回とされていたのが、ほぼ同じになっています。つまり、平均すると5回程度になっているということです。

食物繊維には、水に溶けない性質の不溶性食物繊維と、水を吸って膨らむ性質の水溶性食物繊維があります。不溶性食物繊維は腸壁を刺激して蠕動運動を高める働きがあるものの、便を硬くする作用もあります。そのために便通が思ったように改善されないことにもなります。

それに対して水溶性食物繊維は便を軟らかくする作用があるため、便の状態が改善されて、便通をよくしてくれます。

不溶性食物繊維が多く含まれるのは野菜で、特に多く含まれるのは根菜類です。水溶性食物繊維が多く含まれるのは海藻、キノコ、果物です。以前はコンニャクも水溶性食物繊維として摂取がすすめられていましたが、凝固剤で固めたものは不溶性食物繊維と同じ状態になることが確認されています。水溶性食物繊維の性質があるのはコンニャク粉です。

高齢になると便通が悪くなってきますが、これは食物繊維の摂取量が減るだけではありません。年齢を重ねると自律神経の副交感神経の働きが低下しますが、腸の吸収も蠕動運動も高めるのは副交感神経の役割です。そのため、高齢になったら食物繊維を積極的に摂ることがすすめられるのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)