070 テキにカツは元気のもとなのか

縁起担ぎは迷信のようなものと思われがちで、よく例に出されるのは「テキにカツ」です。高校野球で有名になったことで、「敵に勝つ」に合わせてテキ(ビフテキ)にカツ(トンカツ)を一緒に食べて、戦いに望めば勝てるということで、試合当日の朝食に2種類の肉料理が食卓に並ぶということです。
ビフテキはビーフステーキの略語と言われていて、以前はよく使われていたものの、今では死語になりつつあります。若い世代では聞いたこともないかもしれません。しかし、実際にはフランス料理のビフテック(bifteck)という料理が語源となっています。牛肉を焼いた料理で、内容としてはビーフステーキと同じです。焼いた牛肉と揚げた豚肉を食べたら、かなりパワーが出そうな感じがするので、「テキにカツ」は納得できそうな感じもあります。
ところが、そうではない、という考えがあり、肉に多く含まれる飽和脂肪酸は、いわゆる血液ドロドロの脂肪酸で、食事をしてから脂肪が完全に消化・吸収されるまでには6時間ほどもかかります。これは完全に消化・吸収されるまでの時間で、小腸から吸収されて血液中に多くなり始めるのは1時間ほどしてからです。飽和脂肪酸は血液中で固まりやすく、血流を低下させることになります。
飽和脂肪酸は炭素の結合に二重結合がない脂肪酸で、酢酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの種類があります。動物性食品に多く含まれ、飽和脂肪酸の摂取量が多いと血管の動脈硬化のリスクが高まります。脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸は常温では固形、不飽和脂肪酸は常温では液状になっています。
血流が低下すると酸素が早く運ばれにくくなり、糖質をエネルギーとして燃焼させるときに必要な酸素が減ってしまい、充分にエネルギーが作られなくなりかねません。血液中の飽和脂肪酸が減って、血液がサラサラに戻るまでには5〜6時間はかかります。試合が終わってからパワーが出るということにもなるので、朝食に「テキにカツ」は向いていないことになります。縁起を担いで食べるなら、前日の昼食か夕食にすべきだということです。
これはダイエットのために運動をするときにも通用する知識です。