279 飲酒をすると下痢になるメカニズム

お酒を飲んだ翌日には、おなかがゆるくなる、下痢になるという人が多くいます。その理由についてですが、「お酒という水分を多く飲んでいるから」とか「大腸の働きがよくなって消化されないまま大腸に運ばれてくるから」という理由を述べている医者もいます。お酒にはアルコール以外の水分が含まれているので、多く飲むほど大腸に入ってくる水分が増えるように思われがちですが、身体の中に入ってきた水分のうち80%ほどは小腸で吸収されています。飲む水分量が多くなれば、それだけ小腸で多く吸収されます。大腸でも水分は吸収され続けるので、水分を多く摂ったからといって下痢になることはありません。もしも水分量が多いことで便に含まれる水分が多くなって、便通がよくなるなら、便秘の解消には水を飲めば済んでしまうことになります。
アルコールの80%ほども小腸から吸収されています。アルコールが小腸まで達すると小腸の粘膜にある消化酵素の働きが弱まって、糖分やナトリウムなどが吸収されにくくなり、浸透圧(水分を引きつける力)が変化します。そのために、吸収される水分が減っていきます。この変化は激しい場合には浸透圧性下痢になります。浸透圧性下痢は、水分の吸収量の低下とともに、腸壁の粘膜からの分泌液の量が増えて、大腸内の水分量が増えすぎて、便の中の水分量も増えていきます。
通常の便の水分量は70〜80%で、80〜90%になると軟便となります。これを超えると便が形を保てなくなり、水溶便、つまり下痢となるわけです。飲酒をして下痢になるとしたら、その最大の原因は飲みすぎです。それほど多くの量を飲んでいないのに下痢になるとしたら、アルコール度数が高いものを飲んでいるか、アルコールによって酵素が壊れやすいのが原因と考えられています。便通が、あまりよくない人は、このメカニズムを活用して飲酒をするのもよいことであるとしても、飲みすぎないことだけは注意しないといけないということです。