体質改善

ミトコンドリア内でエネルギー産生が行われるときには、α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10が用いられています。これらの3成分は三大ヒトケミカルと呼ばれ、体内で合成され、ミトコンドリア内でATPを産生するための働きをしており、それぞれ他に変わる成分がないという特徴が共通しています。また、20歳代をピークに合成量が減少し続け、体内蓄積量が減少するにつれて代謝が低下するという特徴も共通しています。
α‐リポ酸はエネルギー源となる糖質(ブドウ糖を)を効果的に燃焼させる役割を担っている成分で、ビタミンに似た働きをするビタミン様の補酵素の一種となっています。水溶性と脂溶性の両方の性質を備えているため、体のいたるところに浸透し、細胞の内側から機能を発揮することができます。体内で合成され、体内のすべての細胞に存在していて、ブドウ糖をアセチルCoAに変換させるとともに、エネルギーを作り出すミトコンドリア内のTCA回路内での補酵素として働いているため、ATP産生に不可欠な成分となっています。α‐リポ酸は天然型のR体と非天然型のS体とがあり、体内で作用するのはR体のみとなっています。R体のα‐リポ酸はR‐αリポ酸と呼ばれています。
L‐カルニチンは必須アミノ酸のリジンとメチオニンから合成されるアミノ酸の一種で、やはり体内で合成され、体内に蓄積されています。脂肪酸がミトコンドリアの膜を通過するためにはL‐カルニチンと結びつくことが必要であり、脂肪酸を細胞に取り込んでミトコンドリア内でエネルギーを作り出す働きをサポートしています。
コエンザイムQ10は、エネルギーを生産するために欠かせない脂溶性のビタミン様物質で、細胞にエネルギーを供給するのを助ける補酵素となっています。酵素は英語ではエンザイムといい、コエンザイムは補酵素を表しています。コエンザイムQ10は、ほとんどすべての細胞に存在しているオレンジ色の成分で、細胞内でエネルギーを発生させるミトコンドリアの中でATPを産生する酵素の作用を助けています。
ヒトケミカルは生命維持に必要な成分で、細胞内で合成されるもので、広義では三大ヒトケミカル以外にホルモン(成長ホルモン、テストステロンなど)、酵素、神経伝達物質、抗酸化物質(SODなど)、体内成分(グルタチオン、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)などがあげられています。広義のヒトケミカルは、細胞内でATPを用いて合成量が増えるという特徴があります。
つまり、広義のヒトケミカルはATPを産生する三大ヒトケミカルによって活性するものであり、ATP産生によって生命維持の機能を向上させることからR‐αリポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は特別に三大ヒトケミカルと呼ばれているわけです。
三大ヒトケミカルは、その有効性から医薬品としても開発されましたが、食品素材として認可され、エネルギー代謝を促進するサプリメントの成分として使われています。
三大ヒトケミカルの成分は食品にも含まれています。コエンザイムQ10は鰯、鯖、牛肉、ピーナッツ、ブロッコリーなどに多く含まれます。最も含有量が多い鰯でも100g中にコエンザイムQ10は約6mgで、通常の食事では1日に5~10mgのコエンザイムQ10を摂取していますが、必要量は1日100mgが目安とされていることからサプリメントによる摂取がすすめられています。L‐カルニチンは肉類に多く含まれ、R‐αリポ酸は酵母、動物の肝臓・腎臓、ホウレン草、ニンジン、トマトに多く含まれていますが、吸収率は高くないことから、やはりサプリメントによる摂取がすすめられています。
年齢を重ねるにつれて細胞の再生が遅くなり、老化が進んでいくのは、三大ヒトケミカルのR‐αリポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10が体内で不足していくためです。エネルギーを作り出すヒトケミカルが不足することで、脂肪がエネルギーとならずに脂肪細胞の中に蓄えられていきます。また、糖質がエネルギーとして効果的に使用されなかった場合には、糖質は肝臓の中で脂肪酸に合成されて、そのあと中性脂肪となって、やはり脂肪細胞の中に蓄えられていきます。
中高年以降に太るのは、食べすぎや運動不足、筋肉が減ることによって代謝が低下することが大きな原因とされているものの、それだけではありません。脂肪と糖質からエネルギーを作り出すヒトケミカルが不足していることで、本来ならエネルギーとなるものが脂肪に回ってしまった結果です。
余分な脂肪として蓄積されるエネルギー源を、本来のエネルギーとして使うことができれば、全身に約60兆個もある細胞の一つひとつのエネルギーを増やし、細胞自体の活性化とともに、細胞の機能を高めることで他の細胞、他の器官を活性化させ、そして全身を活性化させることができるようになっていきます。
全身の細胞の機能を低下させるものとして活性酸素があげられています。活性酸素によって細胞が破壊されたり、細胞の機能が抑えられることが全身の機能低下を引き起こしていくことから、生体内には活性酸素を消去する機能が必要です。活性酸素は細胞内のミトコンドリアでエネルギーが作り出されるときに発生します。コエンザイムQ10やR‐αリポ酸などのヒトケミカルはミトコンドリアの中でエネルギー源のエネルギー変換反応に関わる補酵素ですが、補酵素として働いた後は強力な抗酸化物質に変身し、エネルギー産生で発生した活性酸素を消去します。全身の健康維持のためには、細胞を活性化するミトコンドリア内でのエネルギー産生にヒトケミカルが不可欠なのです。
食品として許可されて以来、三大ヒトケミカルは代謝や老化防止、ダイエットのためのサプリメント成分として研究が進められてきた。コエンザイムQ10とR‐αリポ酸は世界的な研究で高い有効性が認められ、国内での研究でも、それが裏付けられていますが、L‐カルニチンは海外では高い評価が得られてこなかった現実があります。しかし、国内での研究では高い有効性が認められており、その違いが検討され、ほぼ明らかにされています。
文明が発達する地域は穀類や野菜、果物が豊富で、魚も多く獲れるという共通点がありますが、西欧文明の覇者となったイギリス、フランス、ドイツなど北方の寒い地域に国が作られたことから重要なエネルギー源を肉類に頼らなければなりませんでした。肉類には脂肪が多く含まれていても、その脂肪を燃焼させる作用があるL‐カルニチンも多く含まれているので、そのおかげで脂肪を燃焼させる能力が高くなっています。それに対して肉食が少ない日本人はL‐カルニチンの蓄積量も少なく、さらに長生きをした歴史がないことから年齢を重ねるにつれてL‐カルニチンの蓄積量が極端に減りやすくなっています。
肉類の摂取が多い欧米人などはL‐カルニチンが体内に多く蓄積されているのに対して、日本人は蓄積量が少ないためにサプリメントの効果が表れやすくなっているというわけです。